研究課題/領域番号 |
23710247
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 晴久 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90302166)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自然免疫 / 天然物有機化学 / 二次代謝産物 / 生物活性物質 |
研究概要 |
1.天然資源からの自然免疫制御物質の探索 ショウジョウバエを利用した自然免疫活性の評価系を用いて,昆虫寄生糸状菌・卵菌・ツボカビなどの未利用微生物を中心とした各種天然資源についてスクリーニングをおこなった.その結果,卵菌の一種 Saprolegnia terrestris より新規ラノスタン型化合物 terresterol を自然免疫応答増強物質として単離した.本化合物の構造は,絶対構造も含め,各種スペクトルデータと化学構造変換により決定した.Terresterol は10 μg/mL以上で濃度依存的に自然免疫増強作用を示すことが明らかとなった.2.単離した化合物を基盤とした活性誘導体の創製 以前の研究で,糸状菌由来環状デプシペプチド aspergillicin E を自然免疫応答増強物質として同定していた.そこで,種々の生化学実験を行うのに必要な量を確保するとともに,種々の誘導体合成への展開を目指し全合成を行うことにした.その結果,aspergillicin E の合成を達成したが,合成品と天然物の1H NMR スペクトルを比較したところ,L-allo-isoleucine に対応するシグナルの化学シフトにわずかな違いが見られた.したがって,天然より得られた化合物は aspergillicin E ではなくその立体異性体であることが推測された. 一方,強力な自然免疫応答抑制作用を示す放線菌由来化合物 celastramycin A について,各種誘導体の合成を行った結果,ベンゼン環上の塩素原子をメチル基に変換した化合物 CeAMe がより強力な作用を示すことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の項で記したように,研究目的の一つである「天然資源からの自然免疫制御物質の探索」に関しては,未利用微生物である卵菌の一種から自然免疫応答増強作用を有する新規化合物を同定することができた.また,「単離した化合物を基盤とした活性誘導体の創製」に関しても,これまでに得られた自然免疫応答制御物質の全合成,ならびに誘導体合成を実施することができた.したがって,本研究は当初の予定通り順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,本研究の目的が達成できるよう,研究計画にもとづいて推進していく予定である.特に,今年度も実施していた研究目的である「天然資源からの自然免疫制御物質の探索」と「単離した化合物を基盤とした活性誘導体の創製」に加えて,「活性化合物の自然免疫制御機構の解明」についても実施し,これまでに得られた自然免疫応答制御物質の標的分子の解明等をおこなっていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり,平成24年度請求額と合わせて次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.
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