1.天然資源からの自然免疫制御物質の探索 ショウジョウバエを利用した自然免疫活性の評価系を用いて,未利用微生物を中心とした各種天然資源についてスクリーニングをおこなった.今年度は特に,未利用微生物・細胞性粘菌の分化誘導因子として知られている化合物 DIF-1 とその誘導体に対してスクリーニングを行った.その結果,DIF-1 には選択的な作用はみられなかったが,そのフェノール性水酸基をメチル化した誘導体TM-DIF-1 に濃度依存的かつ選択的な自然免疫抑制作用を見出した. 2.単離した化合物を基盤とした活性誘導体の創製と活性化合物の自然免疫制御機構の解明 以前の研究で自然免疫増強作用を示す糸状菌由来化合物 gonytolide A が得られている.この構造を基盤としてさらに多くの誘導体の合成を行い,その自然免疫に対する作用を検討した.その結果,不斉中心を分子中に含まないように設計したビスクロモン型化合物ならびにビスフラボン型化合物が,gonytolide A とほぼ同程度の自然免疫増強作用を示すことが明らかとなった. 強力な自然免疫抑制作用を示す放線菌由来化合物 celastramycin A について,ビオチン-ストレプトアビジン間の強力な相互作用を利用した標的分子の同定を目的として,ビオチン化された誘導体の合成をおこなった.この化合物をショウジョウバエ由来S2細胞に作用させ,その細胞の溶解液をストレプトアビジンでコーティングされた磁性ビーズによって精製した.得られた精製後タンパク質の電気泳動を行った結果,ビオチン化された誘導体を作用させた場合でのみ検出されるバンドが 60 kDa付近に得られた.このバンドがcelastramycin Aの標的タンパク質に相当すると考えられる.
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