研究課題/領域番号 |
23710252
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
工藤 史貴 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00361783)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | テトロドトキシン / 微生物ゲノム解読 / Pseudoalteromonas / Vibrio alginolyticus / Shewanella algae / ゲノムマイニング / 特異生合成遺伝子 |
研究概要 |
テトロドトキシン(TTX)を生産するとして公共の微生物保存機関に登録されたPseudoalteromonas tetraodonis JCM 21038、Shewanella algae JCM 21037、Vibrio alginolyticus NBRC 15630を、通常の方法で培養して染色体DNAを抽出し、ドラフトゲノムDNA配列解析を行った。その結果、これらバクテリアのゲノムDNA配列をほとんど網羅すると考えられるDNA配列情報を得ることができた。ついで同属微生物のゲノムDNA配列と比較し、それぞれの株に特徴的な遺伝子の特定を行った。その結果、これら微生物の遺伝子の大部分は同属のものと相同性が高いことが判明すると同時に、いくつかの特徴的な遺伝子を有していることが明らかとなった。しかしながら、特徴的遺伝子とTTX生合成との関連性を見いだすことは現状では困難であった。また、本研究でドラフトゲノム解読した3株に共通する遺伝子の探索を行なった結果、多くの遺伝子がそれぞれに保存されており、TTX生合成遺伝子として予想される共通遺伝子を絞り込むことはできなかった。以上ドラフトゲノム解析の結果、これら微生物が真にTTX生産性を有するかどうかも検証する必要があるが、TTX生合成に関わる遺伝子が染色体DNA上に散在している可能性もあるので、TTX生合成に関与すると推定できる酵素遺伝子を異種株発現させて、TTX生合成との関連性を検証して行く必要があることが分かった。毒物であるTTXの生合成遺伝子を異種発現させる実験に関しては、遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする間に執る拡散防止措置に関して大臣確認した(23受文科振第243号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TTXを生産するとして保存されている微生物3株のドラフトゲノム解析を行ない、TTX生合成に関与する可能性のある遺伝子情報を入手することができた。比較ゲノム解析の結果、簡単にTTX生合成遺伝子を絞り込めないことも判明し、新たな考えの下、研究を進める必要があることが分かった。また、TTX生合成に関与すると推定される酵素遺伝子を異種株発現させて機能解析する必要があるが、その遺伝子組換え実験の拡散防止措置に関しては大臣確認をとり実施可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
保有しているPseudoalteromonas tetraodonis JCM 21038、Shewanella algae JCM 21037、Vibrio alginolyticus NBRC 15630のTTX生産性について再検証する。自然界における生育条件を再現できずTTX生産性を検出できない可能性も十分考えられるが、これらの微生物にはTTX生合成になんらかの関与があると想定し研究を進める。具体的には、TTX生合成に関係すると考えられる反応を触媒する酵素の機能解明に挑む。特にVibrio alginolyticus のゲノムDNA配列に見いだされた特徴的な遺伝子、炭素骨格の前駆体となりうる糖リン酸を形成するアルドラーゼ型酵素遺伝子、アミノ基やアミジノ基導入に関与すると考えられるアミノ酸代謝に関与する類縁酵素遺伝子の機能解明を進め、TTX生合成との関連性を見いだしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
TTX生産検証用:微生物培養用培地成分、TTX抽出用試薬、クロマトグラフィー用樹脂、LC-MS用溶媒、LC用カラム、TTX標品、溶媒酵素遺伝子機能解析用:オリゴヌクレオチド、分子生物学実験用試薬、酵素反応解析用試薬一般消耗品:ガラス器具、プラスティックディスポーザブル用品、実験用試剤全般その他:DNA配列解析受託(クローニングした遺伝子配列確認用)旅費:TTXに関する研究の情報収集
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