研究課題
本研究は24年度に引き続きWntのシグナル伝達経路における過酸化水素水H2O2と分子状水素H2の分子作用機構、特にH2の標的の因子を調べる事を目標にし、Wnt/beta-cateninシグナル伝達経路の各構成因子のたんぱく質の状態に注目して検討した。昨年度にH2の機能がいくつかの異なる器官由来の細胞種で保存されている可能性がでてきたため、ヒト子宮頸がん由来のHeLa細胞、マウス線維芽細胞株細胞L細胞などを用いて行った。まず、各細胞にH2ガスに暴露することにより、beta-cateninのたんぱく質量を確認した。その結果どの細胞でも、H2ガス暴露によりbeta-cateninたんぱく質量が減少すること、またこの抑制効果は比較的短い時間内(6時間内)で見られる事から、直接的であると考えた。次に、様々な抗体もしくはin vitroによって作成したたんぱく質を用いて、細胞もしくはin vitroでH2ガスの効果を確認した。その結果、H2ガスは多くの、しかし特定のたんぱく質の活性や修飾状態を変化させていることがわかった。以上の結果により、H2O2のみならずH2もWntシグナル伝達経路を直接制御することが明らかになった。以前の研究より、様々な病態モデル動物の発症を抑える事がわかっており、さらにH2は様々なたんぱく質の活性や修飾を変化させることを明らかにしたことから、H2の機能は多様であると考えられる。この結果は、今までに多くの研究や我々の研究によって明らかになったWntシグナル伝達経路の異常による疾患の治療に役立つと考える。これらの研究内容の詳細は、今後シンポジウム、つづいて英文雑誌において発表する予定である。
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