研究課題
生体内低分子代謝物を網羅的に解析するメタボロミクス技術の急速な進歩により、生体情報を低分子レベルまで捉えることが可能になりつつある。そこで、我々は、難治性疾患であり、その発症機序も未だ明らかにされていない炎症性腸疾患をメタボロミクスにより評価を行い、炎症性腸疾患の発症により低分子代謝物がどのように変動するのかを明らかにすることを目的とした。平成25年度は、潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者、健常者の血清中代謝物分析を行い、潰瘍性大腸炎とクローン病、健常者との比較や、潰瘍性大腸炎の病勢との相関について評価を行った。その結果、潰瘍性大腸炎が発症することで、TCA回路関連分子や尿素回路関連分子、数種のアミノ酸が有意に変動することが明らかとなった。また、潰瘍性大腸炎の活動期、寛解期、および、健常人群間において、特徴的な変動を示す24個の代謝物を同定できた。そこで、代謝物プロファイル結果を多変量解析に供し、潰瘍性大腸炎とクローン病、健常者との違いを、多重ロジスティック回帰分析モデルにより評価した。その結果、潰瘍性大腸炎と健常人とを識別するモデルは、感度が93%以上であることを確認した。また、潰瘍性大腸炎とクローン病とを識別するモデルでも、感度が83%以上になることが明らかとなった。さらに、潰瘍性大腸炎の病勢評価モデルについても構築してみた結果、感度は84%以上で、clinical activity indexと有意に高い相関性を示すことが明らかとなった。これらの結果は、炎症性腸疾患と代謝物変動との関連性を強く結びづける可能性を示しており、今後、メタボロミクスを中心としたより詳細な検証を進めることで、炎症性腸疾患に対して新たな提言を与えることが可能となり、炎症性腸疾患に関わる研究の飛躍的な進歩が期待できると考える。
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Journal of Crohn's & colitis
巻: 未定 ページ: 未定
10.1016/j.crohns.2014.01.024.
http://www.med.kobe-u.ac.jp/gi/index.html