オステオポンチンは免疫応答、炎症応答や創傷治癒等に作用するインテグリン結合性サイトカインである。オステオポンチンは様々な翻訳後修飾を受けて活性を変化させるが、中でもトロンビンによる切断や淡白架橋酵素トランスグルタミナーゼ2 による重合は本蛋白質の隠れた機能を出現させる。本研究者は特に重合に着目して機能解析を進め、その過程で重合型オステオポンチンがインテグリンα9β1 新規結合部位を形成して好中球遊走能を発揮することを試験管内及びマウス生体内で示した。これら結果は、オステオポンチン重合体が単なる老廃物ではなく生理活性物質であることを示唆する。平成23年度本補助事業において、炎症時における重合オステオポンチンの重要性が示唆されたことから、平成24年度では計画を一部変更し、実際の炎症モデルマウスにおける重合体の検出やその存在意義について検証し、以下の結果を得た。 1. 敗血症モデルマウスにおける重合型オステオポンチン存在の意義・・・高濃度のLPS腹腔内投与による敗血症モデルマウスを作製し、本マウスに重合阻害抗体BOP1を投与して非投与群と生存率を比較したところ抗体の投与量依存的に生存率が著明に上昇していた。 2. 肝炎モデルマウスにおける重合型 (オリゴマー型) オステオポンチンの検出・・・エタノール過剰摂取による肝炎モデルマウスを作製し、ウェスタンブロッティングによりオステオポンチン検出を試みた。その結果、正常マウスと比較して肝障害モデルマウスではオステオポンチンが有意に増加しており、その形状は試験管内で見られるスメアー状ではなく2~4量体からなるオリゴマーであった。本結果より、オステオポンチンは生体内では不規則に重合するのではなく、ある条件下においては規則的なオリゴマー構造を形成することが判明した。
|