研究課題/領域番号 |
23710259
|
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
奥 直也 富山県立大学, 工学部, 助教 (90525388)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | Lysobacter / Myxococcus / 環境再現培養 / 子実体 |
研究概要 |
1)微生物コレクションの拡大I-嫌気性細菌のコレクション収蔵 調査対象分類群を広げるため、平成22年度に岩手県大槌湾にて採集した海洋試料から得た嫌気性細菌の単菌化を継続した。分離培地より釣菌したコロニーを30℃、光照射条件下、アネロパウチにて固体培養したが、光合成嫌気菌と思しき着色性のスワームを含め、全て2度目の継代で生育しなかった。2)「環境再現培養法」の確立と有用性検証I-ミクソバクテリアの子実体形成を指標として コレクション中のMyxococcus属8株を、滅菌した植物遺骸75 gに餌料としての大腸菌培養液30 mLとV22液体培地100 mLを添加した組成中で500 mLフラスコにて静置培養した。7株が2週間後までに子実体形成を完了した。培養器を毎日動かしたものよりも静置したもののほうが早く子実体を形成したことから、振動は子実体形成を阻害することが判明した。EtOHで抽出したものの十分な試料量が得られず、HPLC分析での比較が不可能であった。なお、抗微生物試験の結果は液体培養抽出物と同等であった。3)抗菌・抗真菌スペクトルの固有性評価に基づく有望株の選定と活性分子の単離・構造決定 千葉県富津沿岸由来Lysobacter属のアルファプロテオバクテリア特異的抗菌物質は、培養ロット間での活性再現性が取れていない。培養器の形状、培地の組成、培養期間などの条件を検討中である。静岡県清水市沿岸由来カビの抗ブドウ球菌成分は、当初アルコールによる分解が疑われたことから、完全にアルコールを排除した分画スキームにて精製を進めた。HPLC分取で得た単一ピークを数十ugスケールでHPLC分析したところ、保持時間の極めて近い複数成分が分離した。その結果、本物質の複雑なNMRスペクトルは回転異性体に由来するというより、むしろ類似物質の混在による可能性が濃厚になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1) 嫌気性菌の分離には成功したものの継代が出来なかったため、コレクションの多様性拡大が達成できていない。2) 環境再現培養法はミクソバクテリアの子実体形成を高確率で誘導したものの、二次代謝産物生産量の増大もしくはプロファイルの多様化は確認できていない。3) Lysobacter属細菌の培養再現性が取れないために、アルファプロテオバクテリア特異的抗菌物質の取得に向けた大量培養の条件が決定出来ていない。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 嫌気性細菌の取得に向けた分離試料、分離法、継代法の精査を行う。具体的には、嫌気環境試料の採取、液体培養による嫌気性菌の集積・維持ステップの導入などが考えられる。2) 環境再現培養法によりミクソバクテリアの子実体形成能は維持できるが、二次代謝の増大効果は認められていない。また、培養スケール拡大が容易でない点も問題であり、その解決も含めて本培養法のの改良・工夫を行っていく。3) カビ由来の抗ブドウ球菌物質の精密分離に向けた分取条件の確立を行う。当初の計画に加え、新たな着想に基づく微生物資源の開拓も必要であると認識している。すなわち、未培養の微生物からどのように二次代謝産物を得るかを考えた場合、環境中に存在する安定した微生物生態系を直接成分検索に供するというアプローチが考えられる。この場合、生産者の特定は困難であるものの、難培養微生物の二次代謝産物が得られる可能性がある。そこで、温泉バイオマット、活性汚泥、群体形成ラン藻に着目し、富山県内での試料採取と抽出成分の抗微生物活性検定および活性成分の追跡を行っている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、微生物分離用資材、培養器具、培地成分、および化学検索に必要な有機溶媒、HPLCカラムなどの消耗品を中心に支出する予定である。
|