研究課題/領域番号 |
23710261
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
池田 玲子 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60516441)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MAT1A / Ellipticine |
研究概要 |
本研究は、肝発生に伴い発現し肝炎及び肝がんにおいてはその発現が消失するMethionine adenosyltransferase 1A(MAT1A)遺伝子発現を誘導するEllipticine及びEllipticine誘導体により引き起こされたMAT1A遺伝子発現メカニズムと正常肝発生におけるその遺伝子発現メカニズムとの相同性を検討するとともに、従来行われている胚性幹細胞から肝細胞様細胞への分化誘導法にEllipticine及びその誘導体を取り入れより効率的な誘導法の確立を目的としたものである。 H23年度では、MAT1A遺伝子発現が消失したマウス肝がん細胞Hepa1-6細胞にEllipticine及びEllipticine誘導体を添加し、MAT1A遺伝子発現が再活性化されることをRT-PCRにより確認した。その結果、3 及び12 micro mollerのEllipticineを添加したHepa1-6細胞では、添加後3時間でMAT1A遺伝子発現が認められた。MAT1A遺伝子を誘導することが知られている脱メチル化剤の5-aza-2'-deoxycytidine (5-aza-dC)より強い誘導を示したことは特筆すべき点である。さらに、ルシフェラーゼアッセイを用いて、MAT1A遺伝子プロモーター領域の活性を観察した。その結果、MAT1A遺伝子は、Ellipticineを添加することによってそのプロモーター活性の有意な上昇が観察された。 MAT1A遺伝子は、正常肝発生に伴い発現し、肝がん及び肝炎ではその発現が消失するため、この遺伝子を誘導したEllipticine及びEllipticine誘導体は肝実質細胞の形成や維持に必要な因子を助長したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自宅療養期間があったため研究の進行が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
MAT1A 遺伝子プロモーター領域のCpG のメチル化レベルは、Bisulfite-sequencing 法を用いて解析する。続いて、Octamaer-binding transcription factor 4(Oct4)やNanog といったエピジェネティックな調節を受けることが知られている遺伝子群についても2)、同様にメチル化解析する。さらに、Ellipticine 誘導体が作用する配列は、MAT1A プロモーター部位のデリーションコンストラクト(-1132/-1、-641/-1、-491/-1、-475/-1、-365/-1、-147/-1)を用いたルシフェラーゼアッセイにより同定する。また、MAT1A の遺伝子プロモーター領域とC/EBPbetaの結合を、Chip-assay を用いて観察する。 続いて、ES細胞から肝細胞様細胞への分化誘導を試みる。ES 細胞から胚葉体(EB)を形成し、三胚葉系への分化系統を観察し、内胚葉から肝細胞様細胞への分化・成熟を行い、その誘導効率を検討する。また、肝前駆細胞及び成熟肝細胞のマーカー遺伝子の発現様式からMAT1A 遺伝子発現への伝達経路を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Bisulfite-sequencing解析によるDNAメチル化解析で用いる試薬及びシーケンス解析費として研究費の一部を使用する。MAT1A遺伝子プロモーター領域のデリーションアッセイで使用する試薬及びシーケンス解析費として研究費の一部を使用する。Chip-assayで用いる抗体類・試薬類の費用として研究費の一部を使用する。また、ES 細胞から肝細胞様細胞への分化誘導時及び確認時で用いる試薬及び抗体類の購入費に研究費の一部を使用する。
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