本研究では,ペプチド系天然物には珍しいV-ATPase阻害活性を有するデストラキシンEのライブラリー合成を基軸とした構造活性相関の解明へ導くことが目的である.前年度に得られた結果を基に,本年度はデストラキシンEを母骨格とする類縁体および構造改変型誘導体の合成を行うことにより,化合物ライブラリーの構築と続く生物活性評価による構造活性相関の解明を目標とした.前年度までに固相合成法を利用することで4残基ペプチドのコンビナトリアル合成を完了しており,引き続き固相上でのペプチド鎖伸長,液相中での大員環構築を経て誘導体合成を検討した.前年度に確立させた大量合成法に従い,液相法にて調製したプロリンを含む2残基フラグメントを縮合後,脱保護と固相からの切り出しを行うことにより環化前駆体を調製した.この際,イソロイシンのような側鎖に嵩高い置換基を有するアミノ酸を用いると縮合反応が円滑に進行せず,望む環化前駆体を純度良く合成できなかったが,反応条件を精査することにより高い純度での合成が可能となった.続いて,マクロラクトン化と側鎖上のエポキシドの構築を行うことで,十数種類のデストラキシンE誘導体の合成に成功した.また,同様の手法を用いることにより,環の員数を増減または窒素上のメチル基を除去した構造改変型誘導体についてもその合成を達成した.さらに,結合位置の特定を目的としたアジドリンカーを有する誘導体について設計と合成を行い,3種類の誘導体を得ることができた.今後は,得られた化合物について生物活性評価を行うことにより構造活性相関を明らかにし,結合位置の解明など機能解析を行っていく予定である.
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