研究課題/領域番号 |
23710265
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 健夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90533125)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | tRNA / ウォブル位 / 転写後修飾 / ウリジン / デコーディング / LC/MS |
研究概要 |
ミトコンドリア/バクテリア型のウォブル位修飾ウリジンxm5Uの再構成系の構築に関し、酵母の修飾酵素であるyMSS1とyMTO1の欠損株にyMSS1とyMTO1を、またはそれらのヒトホモログであるhGTPBP3とhMTO1を各欠損株に相補し、xm5Uが再構成されるかを観察した。結果、C末タグ融合ヒトホモログ相補系ではxm5Uが酵母内で再構成されず、一方、C末タグ有り/無しでの酵母相補系ではC末タグ融合yMSS1相補時のみxm5Uが再構成されなかった。yMSS1/hGTPBP3のC末端が活性に重要な要素である可能性が示唆されると共に、培養細胞で行っていたhGTPBP3の発現系を改善すべき必要性が考えられた。酵母細胞質tRNAの修飾ウリジンncm5Uについて安定同位体標識された酢酸ナトリウム(13C2、CD3体の2種)の修飾構造への取り込みを観測したところ、アセチルCoAが基質となると考えられる修飾シチジンへの同位体元素の取り込みと比較し効率が低いことが示唆された。当初の予想では、酢酸からアセチルCoAへの1段階の転換後、それが直接の基質として利用されると見込まれていたが、この結果は酢酸・アセチルCoAから更なる代謝を経て基質が形成されることで基質中の安定同位体元素の標識が希釈されたことを示唆すると考えられた。一方、ヒトミトコンドリアtRNAのxm5UがホヤミトコンドリアtRNAの変則暗号系においても発見され、xm5U構造の進化的分布と起源を明らかにする寄与があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで活性が見られなかったヒト因子によるミトコンドリア型xm5Uの再構成について、酵母を用いた結果からGTPBP3についてはコンストラクトの再検討を要すること、hMTO1については酵母の系と直交性を持つことが示唆されたことから、活性のあるヒト因子を調製するために必要なコンストラクトの改善をどのように行うべきか方針が定まったと言える。真核生物細胞質xm5Uの解析は、TRM9欠損株を用いることでmcm5Uの中間産物でもあるncm5Uを対象とした解析系を構築し検出感度の改善を図りつつ、基質決定に関しては酢酸の代謝経路において酢酸・アセチルCoAが直接の基質となる可能性が低いことを支持する結果を受け、アシルCoAの代謝経路を調べる方針に絞り込めた。また、好塩性古細菌のRNA解析系と遺伝子破壊系を導入中であり、広く生物種間に見出されるxm5Uをドメイン毎に決定する準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア型xm5Uの修飾酵素GTPBP3がC末タグにより修飾再構成活性を持たなくなる可能性が示唆された。N末タグ付加体を考慮する場合、N末ミトコンドリア移行シグナル配列の残存が活性に影響を及ぼす可能性があるためN末を適切に除去した上でタグを付加する等、コンストラクトの工夫を要する。系の改善を行い引き続きヒト由来コンポーネントを用いた修飾の再構成とヒトタンパクの機能解明を目指す。未だ構造未同定の古細菌xm5Uに関し好塩性古細菌のtRNAのウォブル位修飾ウリジンについてその構造の特定を行い、得られた構造に基づき比較ゲノムから修飾遺伝子の絞り込みを行い、遺伝子破壊法による逆遺伝学的解析により修飾遺伝子の特定を行う。真核生物細胞質mcm5U/ncm5Uに関し、基質の絞り込みを行う。酵母において酢酸が間接的に構造中に取り込まれた結果からアセチルCoA/アシルCoAの代謝経路に関連する基質や遺伝子発現制御株を用い、ncm5U量の変動を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、RNA解析対象となる生物を培養するために必要な試薬、また調製RNA解析に必要な各種試薬、安定同位体標識化合物、分析に必要な各種部品や消耗品の購入、成果発表のための旅費として使用する計画である
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