研究課題/領域番号 |
23710267
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 拓水 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特任助教 (30533179)
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キーワード | セレブロン / サリドマイド / ユビキチン / ポマリドマイド / レナリドマイド / ケミカルバイオロジー |
研究概要 |
昨年においてCRBNがサリドマイドだけでなく、その誘導体であるポマリドマイドやレナリドマイドにおいても主要な標的であることが判明し、CRBNからのCIの解離はそれら誘導体も促すことも判明したことから、CRBNの阻害機構解明において、各種サリドマイド誘導体も使用して行うことにしていた。 本年度は、サリドマイドおよび誘導体によりCIが解離する際のCRBNタンパク質複合体についてより詳細な解析を行った。昨年度においてCul4がCRBNとCIの結合に必要とされることや、187-260のアミノ酸領域(CRBN全長は442アミノ酸)を欠損させたCRBN変異体においてはCIが結合しないことを明らかにしていたので、今年度は点変異体を作製し、CIとの結合量が変化するものを探索した。結果として、サリドマイド結合領域にあるアミノ酸W386に変異をいれたCRBNにおいてはCIの結合量が増大していた。継続して変異体探索を行い、CIが結合しない変異体の発見も次年度で目指す予定である。 加えてCIが解離する際に、CRBNの主要な結合因子であるDDB1に未知の修飾があり、それの修飾が薬剤量依存的に減少することが判明した。さらにこの修飾はリン酸化やアセチル化ではなく、タンパク質であることが判明した。この修飾に対する抑制効果は、CRBNへの結合力の強さと相関があることも判明した。そこで、この修飾部位を欠損したDDB1変異体が含まれるCRBN複合体の機能を検証するために、DDB1点変異体をいくつか作成した。次年度で、その修飾部位を特定し、CIと修飾DDB1の機能的関係を立証する。そしてその関係を明らかにしたのち、修飾部位欠損DDB1変異体を発現させたゼブラフィッシュや多発性骨髄腫において、いかなる発生異常が生じるのかを解析するためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度でCRBNとCIの結合がCul4が足場として必要であることが判明し、今年度では、Cul4の足場に加えて、CRBNのC末の領域が結合量の制御に必要であることが示唆される結果を得た。また点変異体解析で、CIの結合量が増大する変異体を得ることができ、CI非結合型の変異体はまだ得られていないが、来年度で得られるのではないかと期待されるところまで進展した。また、CI解離と連動して、CRBNの主要な結合因子DDB1の修飾量が変化(この場合減少)することが判明したことは、本研究の大元の目的であるサリドマイドによるCRBN阻害の分子機構を明らかにするうえで大変大きな手掛かりが得られたものと考えられる。ただ本年度ではゼブラフィッシュや、昨年の推進方策に書いた多発性骨髄腫株を用いた解析まで届かなかったことから(1)とは言えず、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果に基づいて、DDB1における修飾部位を決定し、その点変異体を作製する。 そして、そのDDB1変異体と結合するCRBNにおいてCIは結合するのか、結合量に変化があるのかを検証する。また、そのDDB1変異体をゼブラフィッシュや多発性骨髄腫に発現させた際に、サリドマイドおよび誘導体の薬効がどう変化するのかを検証する。CIと非結合の変異体の作成もめざし、それが完成したならば、こちらもゼブラフィッシュや多発性骨髄腫に導入し、薬効を解析する。 前年度で達成できなかったCIをノックダウンした際の表現型を検証する。並行して多発性骨髄腫においてもCIをノックダウンし、また薬剤を処理した際に効果に変化があるのかどうかを検証する予定である。これら結果をすべてまとめて、阻害機構へのCIの関わりの意義についての結論を出していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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