研究課題/領域番号 |
23710270
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村田 亜沙子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50557121)
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キーワード | マイクロRNA / cell-basedセレクション / 低分子化合物 |
研究概要 |
本研究の目的は,「非内在性マイクロRNA(miRNA)を創製し,それを用いて遺伝子の発現を制御する」ことである。この目的を達成するために,平成24年度は以下の5つの項目に分けて研究を進めた。 1. 人工pre-miRNAライブラリーの作製: 前年度までに,pre-miR122発現ベクターの導入により,3’-非翻訳領域(3'-UTR)にmiR122の標的配列を含むホタルルシフェラーゼ遺伝子の発現が抑制されることを確認した。今年度は,成熟miR122鎖のアンチセンス側を部分的にランダム化したpre-miR122 dopedライブラリーを含む発現ベクターを調製した。 2. レポーター遺伝子,および人工pre-miRNAライブラリーを発現する細胞株の作製:前年度までに単離したピューロマイシン耐性耐性株を用いて,cell-basedセレクションの条件検討を行った。 3. 低分子化合物と人工pre-miRNAとの相互作用をレポーター遺伝子の活性により評価,選別: 2で作製したピューロマイシン耐性株を用いて,化合物に結合する人工pre-miR122の配列を選別する。具体的には,当研究室でデザイン・合成されたナフチリジン誘導体を用いる。 4. 化合物に結合する人工pre-miRNA配列をプール化,発現ベクターへの再組み込み:3で得られた配列をプール化し,発現ベクターへ組み込んだのち,HEK293細胞へトランスフェクションする。より厳しい条件(ピューロマイシンの濃度を上げるなど)でセレクションを行う。 5. 得られた人工pre-miRNA配列と化合物による,標的遺伝子の発現制御:3, 4により得られた配列を用い,化合物によって人工pre-miR122のプロセシングが制御できるか,それにより標的遺伝子の発現を調節できるかどうかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 人工pre-miRNAライブラリーの作製: おおむね順調に進行している。pre-miR122のアンチセンス側(成熟miR122配列の相補鎖)の10塩基をランダム化した pre-miR122 dopedライブラリーを作製し,それを含む発現ベクターを調製した。エレクトロポレーションにより,調製した発現ベクターを大腸菌に導入し,菌液の一部をプレートに播種,多様性の確認を行った。その結果,3,276,000個/ライブラリーのコロニーが得られ,4^10=1,048,576種類を上回る種類のクローンを得ることに成功した。 2. レポーター遺伝子,および人工pre-miRNAライブラリーを発現する細胞株の作製: やや遅れている。前年度までに単離した耐性株よりRNAを抽出し,ピューロマイシン耐性遺伝子の発現量をqPCRにより確認した。その結果,ピューロマイシン耐性の大小と,発現量に相関が見られなかった。これは,当初予期していた結果に反するものであり,再実験を行っている。 3. 低分子化合物と人工pre-miRNAとの相互作用をレポーター遺伝子の活性により評価,選別: やや遅れている。2に示した通り,現在セレクションの条件検討を行っている。人工pre-miRNAライブラリーを発現する発現ベクターの作製は完了しているため,セレクションの条件を最適化すれば速やかにセレクションを開始できる。 4. 化合物に結合する人工pre-miRNA配列をプール化,発現ベクターへの再組み込み,5. 得られた人工pre-miRNA配列と化合物による,標的遺伝子の発現制御: やや遅れている。2, 3の項目が完了したのち速やかに開始する。
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今後の研究の推進方策 |
cell-basedセレクションを行うのに必要な条件検討を行う過程で,予期に反する結果が得られたため,再実験・再予備検討を行っている。条件の最適化が完了し次第,cell-basedセレクションを開始する。pre-miRNA dopedライブラリーの多様性は確保できていることから,細胞への遺伝子導入効率や培養スケール等の検討を行い,最適化した条件でライブラリー発現細胞の調製を行う。得られたライブラリ発現細胞は,プールして数種類の化合物を標的としたセレクションに用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めるにあたって必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額は異なったが,研究計画に大きな変更はない。しかしながら,研究を進める過程で予期に反した実験結果が得られたため,再実験が必要となり,計画したスケジュール通りには研究が進まなかった。よって,今年度に予定していた実験の一部および成果発表を次年度に行うこととし,未使用額をその経費に充てることとした。
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