研究課題/領域番号 |
23710271
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
間 久直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70437375)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イメージング質量分析 / 投影型 / 薬物動態 / マトリックス支援レーザー脱離イオン化 |
研究概要 |
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption/ionization; MALDI)を用いた投影型イメージング質量分析による薬物動態の測定に向けて、まず、生体内薬剤分子のイオン化条件の検討を行った。その結果、モデル薬剤として用いたブスピロン(抗不安薬)のイオン化には一般的に用いられているマトリックス(イオン化補助剤)の中でもαシアノ4ヒドロキシ桂皮酸を用いると、最もイオン化の効率を高くできることがわかった。さらに、通常のマトリックスにゼオライトを混合して用いることでイオン化効率を1.5倍程度に高くできることががわかった。 MALDIを用いたイメージング質量分析ではマトリックス溶液を試料表面にスプレーで塗布して測定を行う。マトリックス溶液の塗布には一般に金属製のスプレーが用いられているが、金属製のスプレーではスプレー自体がマトリックス溶液中に溶出し、イオン化効率を低下させることを明らかにした。そこで、マトリックス溶液の塗布にガラス製のスプレーを用いたところ、金属製スプレーを用いた場合と比べてイオン化効率を著しく向上させることができた。 次に、高スループットでの薬物動態測定を実現するために、試料を高真空中で自動的かつ高位置精度で移動させるための試料移動機構の設計を行った。その結果、試料を当初目標としていた可動範囲25mm×25mmよりも広い50mm×50mmの範囲において絶対位置精度±1μmで移動させることができる移動機構を設計することができた。ここで、生物系の研究者が扱い慣れている光学顕微鏡でも同一の試料を観察できるようにするため、試料ホルダーはスライドガラスをそのまま装着できる構造とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption/ionization; MALDI)を用いた投影型イメージング質量分析による薬物動態の測定に向けて、生体内薬剤分子のイオン化条件の検討を行い、通常のマトリックスにゼオライトを混合することで薬剤分子のイオン化効率を高めることができることを明らかにした。これは極めて新規性のある知見である。 また、マトリックス溶液の試料表面への塗布法についても検討を行い、従来一般的に用いられてきた金属製のスプレーではスプレー自体がマトリックス溶液中に溶出し、イオン化効率を低下させることを明らかにした。そして、金属製のスプレーの代わりにガラス製のスプレーを用いることで、金属製スプレーを用いた場合と比べてイオン化効率を著しく向上させることができることを明らかにすることができた。 次に、高スループットでの薬物動態測定を実現するために、試料を高真空中で自動的かつ高位置精度で移動させるための試料移動機構の設計を行い、当初目標としていた可動範囲よりも広い50mm×50mmの範囲において絶対位置精度±1μmで移動させることができる移動機構を設計することができた。 以上より、当初計画に対しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き生体内薬剤分子のイオン化条件の検討を行い、本研究の目標としている、組織1gあたり10ngの薬剤を検出可能な感度の実現を目指す。イオン化条件の最適化のみで目標としている感度を達成することが困難な場合には、イオン光学系の改善やイオン検出器の仕様変更による感度の向上などについても検討を行う。 現状の投影型イメージング質量分析装置ではイオン光学系の拡大倍率を最も低い20倍に設定した状態でも視野が400μm程度に限られており、生体組織の観察を行うには視野が狭すぎる。同じように、今後も測定する試料の大きさに応じて様々な倍率で測定することが求められるようになると予想される。しかし、その度に装置内のレンズ電極の交換などを行ってイオン光学系の倍率を変更していたのでは効率が悪い。そこで、レンズ電極はそのままで電極に印加する電圧を変化させるだけでイオン光学系の倍率を連続的に変えることができるズーム光学系の設計・製作を行う。これにより、通常の光学顕微鏡などのように、まずは低倍率で測定を行い、その中から関心のある部分を拡大して高空間分解能で測定するといった使い分けが容易に行えるようになる。ズーム光学系の設計にはイオン光学系シミュレーションソフトウェアを用い、拡大倍率を変化させても収差が増大しない(画質が低下しない)ような光学系を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に設計を行った試料移動機構の納品が約1ヶ月遅れており、平成24年度に設備備品として納品される予定である。 平成24年度に設計を行うイオン光学式ズーム光学系を設備備品として購入する予定である。 この他、レーザーを試料に照射するために必要なレンズやミラーなどの光学部品、計測に必要な電子回路用の部品、薬剤分子およびそれらをイオン化させるために必要となるマトリックスなどの試薬、動物実験で用いる動物、および本研究の成果を発表する論文の別刷を消耗品として購入する予定である。
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