研究課題/領域番号 |
23710274
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鳥飼 浩平 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20456990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 梯子状ポリエーテル / 海産毒 / 活性発現機構 |
研究概要 |
渦鞭毛藻の2次代謝物である梯子状ポリエーテル(Ladder-shaped polyether, LSP)の全合成を達成するには収束的合成法の確立に加え,鍵反応に用いる原料(基質)をいかに効率的に,大量に合成できるかが最も重要になる。そこで本年度はLSP合成に一般的に用いられるビルディングブロックの大量合成を抜本的に改良すべく,研究を行った。単環性ビルディングブロックであるテトラヒドロピラン誘導体はこれまでNicolaouらが90年代初頭に報告した方法に従って合成されていたが,本方法は大量の悪臭物質の副生,中間体のシリカゲルカラムクロマトグラフィーに対する不安定性,Katsuki-Sharpless不斉エポキシ化反応後処理の煩雑さ及び工程数の多さ等の問題点を有しており100 gスケールでの合成には不向きであった。そこで今回我々は各工程の効率化を念頭に合成研究を推進した。その結果従来のDMSO酸化やKatsuki-Sharpless不斉エポキシ化に替えてAZADOやTEMPOとNaOClを用いる触媒的酸化やShiエポキシ化を採用したり,ワンポット反応を導入することで無臭かつ実用性の高いルートを構築することに成功した(投稿準備中)。またさらに多数の環を有する化合物の大量合成においては,反応性に富み,短寿命の化学種を大量合成に用いるべく,グラムスケールで全く目的物が得られなかった反応に対しフローマイクロ合成の適用を検討した。現在のところ最適条件は見い出せていないが,成功の糸口になる反応温度及び時間条件を絞り込めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では既存の方法を用いてビルディングブロックを合成し,全合成へと向かう予定であった。しかしながら既知の方法であっても大量合成に用いる際には多数の問題点があることに直面し,梯子状ポリエーテル(LSP)の作用機作解明を目指した多様なプローブ分子の合成を行うには,通常論文上では表面化しないビルディングブロックの合成法の刷新が必要不可欠であると考えた。上述の方針転換により当初の計画より研究の進捗は遅れているが,本研究は長い目で見れば現在世界中で精力的に研究されている梯子状ポリエーテル研究の土台を支えることにつながるものであると自負している。
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今後の研究の推進方策 |
梯子状ポリエーテル(LSP)の作用機作解明を目指した多様なプローブ分子の合成を行うには,通常論文上では表面化しないビルディングブロックの合成法の刷新が必要不可欠であることが昨年度の研究で明らかになった。そこで長い目で見れば現在世界中で精力的に研究されている梯子状ポリエーテル研究の土台を支えることにつながる地道な研究をまずは完結させるべく,LSP合成に一般的に用いることができる単環性ビルディングブロックの大量合成法の確立を目指す。さらにそれらから多環性化合物を合成する手法としてマイクロフロー合成を取り入れ,フロー系による多環性化合物の大量供給を目指す。上述のような基礎研究により合成法をボトムアップさせ,その成果を応用することで迅速なLSP及びそのプローブ分子の合成へと展開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度すぐに必要でないため購入を自粛した薬品や器具を購入するため,平成24年度は物品費に500,000円+前年度余剰金105,681円=合計605,681円を計上した。旅費は昨年度の経験から申請時の予想より若干多くなる傾向が見て取れ,また今年度はアウトリーチ活動も予定しているので,当初の計上額200,000円に前年度余剰金100,000円を加え,合計300,000円を計上した。
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