研究課題/領域番号 |
23710274
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鳥飼 浩平 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20456990)
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キーワード | 梯子状ポリエーテル / 海産毒 / 活性発現機構 |
研究概要 |
渦鞭毛藻の二次代謝物である梯子状ポリエーテル(Ladder-Shaped Polyether, LSP)類の合成研究はしばしば100段階を超える多段階合成となる。その実現には収束的合成法の確立に加え,鍵反応に用いる原料(基質)をいかに効率的に,かつ大量に合成できるかが重要になる。そこで本年度は前年度に引き続き,LSP合成に汎用されるビルディングブロックの大量改良合成法の確立を目指し,研究を推進した。 LSPの合成研究において単環性ビルディングブロックとして最も頻繁に用いられているテトラヒドロピラン誘導体の合成は,20年以上にわたってNicolaouらの開発した方法に頼られてきた。しかしながら本方法は大量の悪臭物質の副生,中間体のシリカゲルカラムクロマトグラフィーに対する不安定性に加え,Katsuki-Sharpless不斉エポキシ化反応後の後処理時にエマルジョンを形成してしまう等,煩雑さの面でも問題点を抱えていた。今回100 gスケールでの合成を念頭に置き,触媒的選択的酸化,Shi不斉エポキシ化,時間的集積型化学を駆使することで改良に取り組んだところ,段階数を3段階,シリカゲルカラムクロマトグラフィーを5回削減し,さらに従来法よりも安価に目的物を得る方法論を確立することが出来た(投稿準備中。)本方法論は大スケールでのテトラヒドロピラン誘導体合成には特に有効であり,これまで数カ月を要していた合成をわずか1週間程度で可能にした。 一方,マイクロフロー系によるフリルリチウムとトリフラートのカップリング反応を鍵段階とする新規LSP合成法の開発に関しては基質不足のため十分な検討が出来ず,昨年度以上の成果を得ることが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では既存の方法を用いてビルディングブロックを合成し,全合成研究へと向かう予定であった。しかしながら既知の方法を大量合成に適用しようとした際,多数の問題点に直面した。このことから梯子状ポリエーテル(LSP)の作用機作解明を目指した多様なプローブ分子の合成研究の遂行には,通常論文上では表面化しないビルディングブロックの合成法の刷新を避けては通れないと痛感し,方針転換を余儀なくされた。しかしながら本年度の研究を通して,大量合成におけるほぼ全ての問題点をクリアーできたので,今後我々の研究は加速度的に進むと期待できる。加えて本成果は現在世界中で精力的に研究が展開されているLSPの合成及び作用機作解明研究の土台を支え進展を促すことが期待できるため,非常に有意義であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度我々は,梯子状ポリエーテル(LSP)の作用機作解明を目指し,多様なプローブ分子の合成研究を推進するのに必要不可欠であったビルディングブロックの合成法の刷新に成功した。そこで次年度は,本年度の研究で確立した方法論を基にビルディングブロックの大量合成を行う。その後,昨年度研究に用いる基質不足のため十分な検討が出来なかったマイクロフロー系による新規LSP合成法の開発を検討する。具体的にはフリルリチウムとアルキルトリフラートの混合速度をさらに高め,その後の反応時間を延長することで十分な反応を促し,望む反応生成物の収率を向上させる予定である。鍵反応であるカップリングがうまく進行すれば,そのままLSPの全合成へと応用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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