研究課題/領域番号 |
23710277
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研究機関 | (財)高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
奥村 英夫 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (90377903)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / X線結晶構造解析 / エステル化反応 / 基質認識 |
研究概要 |
放線菌の二次代謝化合物生合成遺伝子から発見された三級水酸基をエステル化する新規酵素は、有機合成では極めて困難な反応を生理的環境下で行う。本研究は本新規酵素による基質認識、および反応機構を立体構造解析によって解明することを目的としている。 本年度は、当初計画に基づき、まず三級水酸基のエステル化反応を行う新規酵素の結晶化条件の探索を行った。本酵素を作りだす放線菌のゲノム解析、反応に関する生化学的研究の結果、本エステル化反応には二つの新規酵素が関与していることが明らかとなった。そこで、それぞれの酵素について大腸菌を用いた組み換え発現実験、精製実験を行った結果、両酵素の高純度精製試料が得られた。精製サンプルを用いてそれぞれの結晶化条件の探索を行ったが、両酵素とも結晶を得ることができなかった。発現条件、精製条件についてさらに再検討し、結晶化スクリーニングを行っているが、現在のところ両酵素とも結晶化に対して良好な結果は得られていない。 一方、本反応についてさらに生化学的研究が進んだ結果、この二つの酵素を共発現させた系で本エステル化反応を行うと、反応効率が格段に上昇することが明らかとなった。そこで二つの酵素を共発現させるプラスミドを用いて、大腸菌発現実験、精製実験を行い、高純度精製試料を得た。本サンプルを用いて二酵素複合体の結晶化スクリーニングを実行したが、現在のところ、両酵素複合体の結晶は得られていない。生化学的研究の結果から、両酵素がそれぞれホモ複合体を形成する可能性も示唆されており、現在、タグ発現の有無、発現領域の再検討に合わせて、精製試料については複合体の安定化条件の検討、結晶化条件の検索を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は平成23年4月中旬に(独)理化学研究所から(財)高輝度光科学研究センターへと所属を変更した。本研究は大腸菌の遺伝子組み換え実験を含んでいるが、(財)高輝度光科学研究センターでは施設内における遺伝子組み換え実験の申請・審査を3月と8月の年2回のみ実施しており、実際に遺伝子組み換え実験の許可を得られたのは10月であった。その結果実験の開始が大幅に遅れてしまったことは、研究の進捗が遅れている理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
結晶化が遅れているため、次年度は引き続き二酵素複合体の結晶化実験を精力的に行う。具体的にはタグ発現の種類・有無、発現領域の再検討に合わせて、精製試料については複合体の安定化条件の検討、結晶化条件の検索を行う。複合体結晶が得られた後、大型放射光施設SPring-8にてX線回折実験を行い、構造解析を行う。さらに、基質との複合体結晶を作成し、これについてもX線構造解析を行う。得られた構造を元にして、基質認識部位改変モデリングとドッキングシミュレーションを計画している。ここから得られた情報を元に、新規エステル化酵素の基質認識部位の改変を行い、他の基質に対する基質認識特異性、ならびにエステル化反応機能の獲得を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の収支状況について、課題の平成23年度本研究費は主として遺伝子組み換え実験、タンパク質精製実験、結晶化の試薬、X線回折実験器具等の消耗品の購入を予定していた。しかし、遺伝子組み替え実験の承認を得られてから開始した実験の期間に応じた消費になっているため、今年度予算から次年度へ繰り越しが発生している。平成24年度は遺伝子組換え実験、タンパク質精製、タンパク質結晶化に加え、ドッキングシミュレーション、酵素アッセイ実験、HPLC 分析、LC/MS 測定を計画しており、それぞれ、X線回折実験器具、構造解析用コンピュータ、分子シミュレーションソフト、シミュレーション用コンピュータ、遺伝子実験試薬、生化学実験試薬、HPLC 試薬が必要である。前年度からの繰り越し分も合わせ、これら消耗品の購入に使用する予定である。なお、シミュレーショソフト、コンピュータについてはすでに所属グループで所有しているものを利用する。また、平成24年度は成果の国内学会での発表を予定しており、本件の旅費に予算を充てる予定である。
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