放線菌の二次代謝化合物生合成遺伝子から発見された三級水酸基をエステル化する新規酵素は、有機合成では極めて困難な反応を生理的環境下で行う。本反応の詳細を明らかにし、また制御することができれば、本反応により通常の化学合成反応では困難な新たな二次代謝化合物の生合成が可能になると考えられる。本研究は本新規酵素による基質認識、および反応機構を酵素タンパク質の立体構造解析を中心とした研究によって解明することを目的としている。 これまでの研究においては、本酵素を作りだす放線菌のゲノム解析、反応に関する生化学的研究の結果、本エステル化反応には複数の新規酵素が関与していることが明らかになりつつある。本年度は、三級水酸基のエステル化反応を行う新規酵素の結晶化条件の探索を昨年に引き続き行った。そこで、それぞれの酵素について大腸菌を用いた組み換え発現実験、精製実験を行った結果、結晶化に資する高純度精製試料を得た。これらの精製サンプルを用いてそれぞれの結晶化条件の探索を行った結果、1つの酵素タンパク質について結晶化条件を見出すことができた。得られた情報を元に結晶化条件の最適化を繰り返し、結果、得られた結晶を用いて大型放射光施設SPring-8で回折実験を行ったところ、最高で1.8A分解能での回折データセットを得ることができた。現在解析を進めているところであるが、今後も構造、機能構造相関、反応機構の解析についてさらに研究を進める予定である。
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