研究課題/領域番号 |
23710278
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 雄大 東北大学, 大学院生命科学研究科, 助教 (60550077)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生物多様性保全 / 地球温暖化 / 高山生態系 / 高山植物 / 高層湿原 |
研究概要 |
地域の生物多様性(ガンマ多様性)を生み出す生態的プロセスは、様々なスケールで働いている。そのため、生態系における生物多様性の保全戦略を計画する際には、複数のスケールで生物多様性を定量化し、保全上重要なスケールを特定することが必要である。 本研究が対象とする青森県八甲田山系に分布する湿原植物群集は、温暖化による環境変化に対して最も脆弱な生物相の一つと考えられているが、その保全への指針は確立しているとは言い難い。また、全国的にも、高山・亜高山生態系に分布する湿原植物群集における多様性保全のための科学的基盤は極めて不足している。そこで、当該地域の湿原植物群集における種多様性の空間パターンを検証し、どのスケールでの種多様性がガンマ多様性に大きく貢献しているのかを見出すことを目的とした。 八甲田山系に分布する大小計28の湿原群を対象とし、階層的なサンプリングデザイン(空間階層は、湿原内に配置されたトランセクト、湿原、湿原群全体の全部で三つで構成される)で植生調査を行った。加法分割の手法を用いて、ガンマ多様性を湿原間多様性、湿原内トランセクト間多様性、湿原内トランセクト内多様性に分解し、それぞれの観察値を帰無モデルより得られた予測値と比較した。 結果、湿原間スケールでのベータ多様性は帰無モデルの予測値よりも高く、ガンマ多様性への貢献度も非常に大きいことが明らかとなった。また、トランセクト内スケールでのアルファ多様性は帰無モデルの予測値よりも低く、ガンマ多様性への貢献度が小さかった。 以上より、本研究地域の湿原植物群集における種多様性を保全していくためには、湿原間スケールでの種多様性を効果的に保全していく必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画書に掲げた通りの野外調査デザインでデータを取得することができた。得られたデータに基づいて、第一段階のデータ解析を終えることができた。結果は論文としてまとめ、学術雑誌にて公表した。以上のことから、おおむね研究計画通りに研究が進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画に掲げた項目を達成するため、引き続き取得データの解析、数値シミュレーション解析を行い、結果を学術雑誌に公表する。また、学会、研究集会等でも発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
野外調査について、前年度に行った調査にしたがって、再調査を夏季に行うため、調査に伴う旅費が必要である。調査が大規模となるため、調査補助者への謝金が必要不可欠である。野外調査では現地でデータを得るとともに、植物体サンプルを研究室に持ち帰り、実験室でサンプルの化学分析を行う予定である。その際の分析補助者への謝金、薬品等の消耗品費が必須である。また、9月末からアメリカで開催される環境学関連の国際会議で成果を発表するため、その費用も当該研究費から支出する予定である。
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