地域絶滅が各所に見られる東北地方の冷温帯林に生息するニホンザル(以下サル)は、近年分布を回復させている。本研究ではこうしたサルの分布回復が在来の生物間相互作用に及ぼす影響を評価することを目的に、サルの「採食」に由来する生食・腐食連鎖プロセスの解明に取り組んだ。その結果、サルの採食が在来植生の多様性維持機構を補強する複数のプロセスを特定できた。特に、サルは種子の一次散布者になるだけでなく、排出される糞が種子の二次散布者として機能する食糞性コガネムシ群集のバイオマス維持に貢献することが明らかとなり、サルの分布回復が在来生態系への種子供給を活性化させる可能性が示唆された。
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