研究課題/領域番号 |
23710282
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井川 武 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00507197)
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キーワード | 集団遺伝学 / 西南諸島 / 絶滅危惧種 / 保全遺伝学 / 生息適地モデル / 景観遺伝学 / マイクロサテライト / 両生類 |
研究概要 |
本年度は、以下の3つの項目について研究を行った。 (A)イシカワガエル種群における遺伝的多様性及び集団構造の解明: 昨年度に引き続き、GISを用いた景観遺伝学的解析をおこなった。その結果、イシカワガエルとアマミイシカワガエルの集団間の遺伝的分化は、基本的には生息適地の連続性と相関があり、特に標高と土壌に依存した分布拡散のパタンによって形作られていることが明かになった。本研究は本邦産両生類において、体系的な景観遺伝学的解析を行った初めての研究であり、また、西南諸島における島嶼内の遺伝的多様性の形成要因を明示的に証明した初の研究成果である。これらの成果はHeredity誌に掲載された。 (B)イボイモリにおける遺伝的多様性及び集団構造の解明: 昨年度開発した10のSSRマーカーを用いて、集団遺伝学的解析を行った。その結果、各島嶼間で明確な遺伝的分化が見られ、さらに各島嶼内でもいくつかの分集団構造が存在するという、階層的構造が明かになった。ただし、各島嶼内の集団構造は明確ではなく、また一部で遺伝的にかなり異なる集団が隣接したパタンを形成していた。これらの結果は、基本的にはミトコンドリア遺伝子に基づく分子系統樹とも一致することから、大過去における分断イベントと、最近の分布拡大が原因と考えられた。 (C)オットンガエルとホルストガエルにおけるSSRマーカーの開発と遺伝的多様性の解明: ホルストガエルについて、姉妹種であるオットンガエルのSSRマーカーによるタイピングを試みると同時に、新規SSRマーカーの開発を行った。その結果、既に報告されているオットンガエルのSSRマーカーがホルストガエルにおいても使用可能であり、また新規に8つのSSRマーカーを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で、研究対象として計画していた7種の西南諸島産両生類絶滅危惧種のうち、5種(イシカワガエル、アマミイシカワガエル、イボイモリ、オットンガエル、ホルストガエル)についてマイクロサテライトマーカーを開発し、そのうち、2種(イボイモリ、ホルストガエル)については集団遺伝学的解析に着手、2種(イシカワガエル、アマミイシカワガエル)については、最終的な研究成果を発表している。最終的な目標の7割は達成しつつあり、最終年度である次年度には研究の総括が可能になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であることから、現在着手している5種については、包括的な研究成果を発表する予定である。また、これまで着手できていないナミエガエル、ハナサキガエル種群については、サンプル採集及び、マイクロサテライトマーカーの開発を引き続き行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費については、遺伝的解析における実験を行うための試薬・消耗品を予定している。旅費については、サンプル採集及び学会における成果発表旅費を予定している。人件費・謝金については、サンプル採集協力者への謝金を予定している。、その他については、実験に掛かる各種受注サービスの利用を計画している。
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