研究課題
紅藻サンゴモ類は,サンゴ礁域においては造礁生物として,温帯~寒帯域では,藻場が衰退した磯焼け海域に繁茂する石灰藻として知られている。近年,気候変動,とくに海洋酸性化によって,サンゴモ類の生育が阻害されることが報告されている。本研究では,酸性条件がサンゴモ類の生育に与える影響について,水槽実験による調査と,生育に関する機能遺伝子の発現解析のための遺伝子同定を目的としている。平成25年度は,材料の採集が比較的簡単であることを考慮して,温帯域の代表的な無節サンゴモであるヒライボを研究対象として,水槽実験と遺伝子実験を行った。水槽実験は,産業革命前,現在,将来の予測CO2濃度4段階の合計6段階について,水温は,サンプル採集地の広島県竹原市における5月下旬(17℃)と8月(25℃)の平均水温の2段階で実験を行った。その結果,17℃ではCO2分圧によらず,正の成長率を示したが,25℃では酸性ストレス条件下で負の成長率を示した。おそらく17℃が海藻の繁茂期の好適な水温なのに対し,25℃は夏枯れの時期の高水温に相当していたため,17℃では,酸性ストレス下で成長による石灰化が溶解を上回ったが,25℃では,成長が鈍化し,石灰化が溶解より下回ったと考えられる。前年度までにサンゴ礁域に多産する種で行ってきた実験結果と同様,温帯の種でも,酸性ストレスに弱いことを確認できた上,酸性化ストレスの影響が季節的な成長の違いによっても異なることを初めて確認できた。遺伝子実験では, RNA抽出方法を改良し,生サンプルを粉砕してから固定液に浸漬し,組織を十分固定してから抽出を行うことでRNAを得られた。このRNAと前年度までに設計したプライマーをもとに3’RACE法を行い,β-炭酸脱水素酵素の部分配列を得た。抽出法を改良し,3’末側配列を得たことで,発現解析用のプライマー設計を可能にできた。
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Marine Environmental Research
巻: 94 ページ: 1-6
10.1016/j.marenvres.2013.10.010
http://www.nies.go.jp/biology/research/pu/2013/1314.html