研究課題/領域番号 |
23710285
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
瀧本 岳 東邦大学, 理学部, 准教授 (90453852)
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キーワード | 外来生物 / 分布拡大予測 / 個体ベースシミュレーション / アリー効果 |
研究概要 |
本研究の目的は、低密度状態の外来生物の空間分布パターンから、その分布拡大加速化の予兆となるシグナルを見つけ出すための基本理論を構築することである。また、開発した予兆シグナルを実際の外来生物に適用し、分布拡大を予防するためのモニタリングの枠組みを提案することである。具体的には次の3項目を行うことになっている。(1)分布拡大加速化の予兆シグナルの開発。(2)既存データへの予兆シグナルの適用。(3)霞ヶ浦のカワヒバリガイへの適用。これら3項目について、H24年度には以下の研究内容を実施した。 (1)については、H23年度に構築した、予兆シグナルを開発するための空間明示的個体ベースシミュレーションモデルの解析を引き続き行った。特に予兆シグナルが擬陽性となりうる場合が認められたため、予兆シグナルの信頼性の評価手法の開発を試みている。また生態系管理理論に関するシンポジウム(2012年10月、於東邦大学)を開催し、予兆シグナル開発・外来生物管理に造詣の深い海外研究者(カリフォルニア大学デービス校Alan Hastings博士)を招聘し、予兆シグナルの信頼性の評価手法について、意見交換を行った。(2)については、千葉県におけるアライグマの分布拡大予測モデルを詳細な個体群動態プロセスを組み込んで作成する予定であったが、進展させることができなかった。(3)については、春、夏、秋と野外調査を行い、現時点での霞ヶ浦での分布状況を把握し、分布拡大を左右すると考えられる環境要因の調査を行った。分布調査の結果、カワヒバリガイの分布拡大が進んでいることが分かった。さらに分布拡大予測モデルを用いて将来予測を行ったところ、6年後には霞ヶ浦の全域に分布拡大してしまう可能性が明らかになった。この結果は日本生態学会第60回大会(静岡)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の具体的な目的として設定している3項目について、(3)カワヒバリガイの分布拡大調査については十分な成果が得られたものの、他の2項目については、計画していた程度の進捗が得られていないため。
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今後の研究の推進方策 |
目的である3項目の(1)については、モデル解析と予兆シグナルの不確実性の評価をさらに進め、一編の論文にまとめて投稿する。(2)については、(1)の予兆シグナルの不確実性の評価を優先させるために、さらに進展させる予定はない。(3)については、分布拡大調査の報告と分布拡大予測モデルの結果を、一編の論文として投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に目的(1)の研究を効率よく推進するために、高性能のデスクトップコンピュータを導入し、さらに数値計算補助を行う人員を雇用する。目的(1)の研究の遅延によりH24年度に生じた「次年度使用額」の一部は、これらの費用に充当させる。
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