本研究の主目的は、低密度状態の外来生物の空間分布パターンから、その分布拡大加速化を予測する基本理論を構築することである。また、この理論を実際の外来生物に適用し、分布拡大を予防するためのモニタリングの枠組みを提案することである。 低密度で1匹あたりの個体群増殖率が下がる「アリー効果」現象は、外来生物の分布拡大加速化に時間遅れを生む原因となる。本研究では、(1)外来生物の分布拡大加速化の時間遅れがアリー効果によるものかどうかを判別し、(2)外来生物の潜伏期間中に事前に分布拡大加速化を予測するための理論枠組みを構築できた。この成果は、2011・2012年度に行ったモデル構築・解析と、2013年度に研究協力者(鈴木健大)の研究補助を得て行った数値シミュレーショから得られた。この成果は2013年度の第61回日本生態学会(広島)にて発表し、2014年度に論文にまとめて国際誌に投稿する。 外来生物の分布拡大および影響の時間変化に関する実証研究をレビューし、総説にまとめた(2011年度)。外来生物の種類によって、分布拡大速度や生態学的・社会学的影響の時間変化に大きなばらつきがあることを明らかにした。 理論構築に資する野外データを得るため、研究協力者(伊藤健二博士)の協力を得て、霞ヶ浦の特定外来生物カワヒバリガイの分布状況を調査した。この調査の結果、霞ヶ浦でのカワヒバリガイの分布は近年大きく拡大し、その悪影響が懸念されることが分かった(2011・2012年度に調査を実施、2012年度に学会発表。2013年度に論文公表)。 また生態系管理理論に関するシンポジウムを開催し(2012年10月)、予兆シグナル開発・外来生物管理に詳しい海外研究者(Alan Hastings博士)を招聘し、予兆シグナルの信頼性の評価手法について意見交換した。シンポジウムの成果は2013年度に論文として公表した。
|