研究課題/領域番号 |
23710286
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
渡辺 伸一 福山大学, 生命工学部, 講師 (20450728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | カブトガニ / バイオロギング / バイオテレメトリー / 調査技術 / 加速度・深度ロガー / 超音波発信器 / 潮間帯 / 環境選択性 |
研究概要 |
本研究は、カブトガニの行動を短・長期的に記録するためにバイオロギングとバイオテレメトリーの双方の利点を有効に生かした調査技術を開発し、最終的にはこれまでまったく明らかでなかった野外におけるカブトガニの生態を解明することを目的としている。そのために1)室内・屋外飼育実験と2)野外調査の結果にもとづく調査技術の開発を平成23年度の研究目標とした。1)飼育実験:カブトガニ成体3個体をもちいて、福山大学附属因島マリンバイオセンターの実験水槽と笠岡市立カブトガニ博物館の屋外実験水槽で加速度データロガー(Gロガー)と深度ロガー(Dロガー)をもちいた飼育実験を行った。その結果、Gロガーは短期的(40日以内)な行動を詳細に記録するために有効な手法であり、Dロガーは大まかな行動を長期的(3年以内)に記録するために有効な手法であることが明らかになった。また、Gロガーは体の微細な動きを感知するため背面部に装着し、Dロガーは長期的に装着するため、脱落の可能性の少ない尾部に装着するのが最良の方法であることが明らかになった。2)野外実験:カブトガニ成体6個体に超音波発信器を装着して笠岡湾内に放流し、バイオテレメトリーをもちいて定期的に個体の位置を定位した。その結果、好んで利用する環境が産卵期中と産卵期後で変化することが明らかになり、産卵行動と環境選択性が関係することが示唆された。そのうち4個体にDロガーを装着して放流した結果、1個体を再捕獲してデータを回収することができた。これらの個体は、次年度以降に漁業による混獲によって採集されることを予定していたのだが、放流から6カ月後に底引き網によって再捕獲された。よって、この回収方法が有効なデータを得る上で妥当な手法であることが証明された。また、得られたデータは、カブトガニの越冬地を推定する上で極めて重要なデータとなることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の目標である調査技術の開発は9のようにほぼ達成され、さらに次年度以降の目標であった野外のカブトガニの行動生態に関するデータがすでに得られはじめているため、当初の目標以上の成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実験の結果、野外ではデータロガーの回収が困難であることから、長期的な行動の計測が可能であるDロガーをもちいた調査を行う。また、加速度データロガーの代わりに加速度センサ内蔵の超音波発信器を装着して、詳細な活動パターンを記録することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の計画に関連して加速度センサ内蔵超音波発信器とその受信装置、ならびにその設置に関する用具の購入を行う。また、定期的に受信データをダウンロードするためと、現地の餌条件などの環境調査のための調査地への交通費などに使用する。また、平成23年度に得られた飼育実験の結果を研究論文にまとめる際の論文投稿に関わる費用などに使用する計画である。
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