研究課題/領域番号 |
23710286
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
渡辺 伸一 福山大学, 生命工学部, 講師 (20450728)
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キーワード | カブトガニ / バイオロギング / バイオテレメトリー / 調査技術 / データロガー / 超音波発信器 / 潮間帯 / 環境選択性 |
研究概要 |
本研究は、カブトガニの行動を短・長期的に記録するためにバイオロギングとバイオテレメトリーの双方の利点を生かした調査技術を開発し、野外におけるカブトガニの生態を解明して、干潟生態系の保全に関する指針を提供することを目的としている。 平成23年度の研究において、カブトガニの調査技術の開発を行い、平成24年度の研究では、それらの手法をもちいてカブトガニの行動に関するデータを蓄積し、カブトガニの活動周期やその要因について詳しく分析した。 飼育実験:カブトガニ成体をもちいて、福山大学附属因島マリンバイオセンターの実験水槽と笠岡市立カブトガニ博物館の屋外実験水槽でバイオロギングをもちいた飼育実験を行った。その結果、カブトガニの活動は、潮汐と昼夜の二つのサイクルに同調した概日リズムを示すことが明らかになった。 野外実験:カブトガニ成体に加速度センサ内蔵型の超音波発信器を装着して笠岡湾内に放流し、バイオテレメトリーをもちいて野生下での活動を記録した。その結果、飼育実験の結果と同様に野外でも潮汐と昼夜のサイクルがカブトガニの活動周期に影響していることが明らかになった。また、平成23年度に深度ロガーを装着して放流した4個体のうち、2個体を再捕獲し、長期間に渡る行動データを得ることができた。その結果、概日リズムのほかに、水温低下に伴う越冬行動など長期的な活動周期を分析するデータを得ることができた。また、カブトガニ幼生の生息地において、分布調査と行動調査を行い、成体との活動パターンの比較や干潟における生息密度やその季節変化について調査した。 以上の成果は、国際学会(PICES2012)、日本水産学会中国四国支部例会で発表し、また、笠岡市立カブトガニ博物館における特別展示展(カブトガニの不思議展2012)においても研究展示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度までの目標であった、調査技術の開発と野外におけるカブトガニの行動生態に関するデータの収集は行われ、さまざまな研究成果を得ることができた。また、その研究成果は国内外の学会等で発表するだけでなく、博物館における研究展示という形で広く社会へ情報提供するに至り、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
野外における行動調査として、長期計測が可能な加速度センサ内蔵の超音波発信器および深度ロガーをもちいた調査を行い、野外における行動データの収集を行う。 これまでのデータを総括して、研究成果をまとめ学術学会で発表し、学術雑誌への論文の投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度装着するための消耗品として、データロガーと超音波発信器の購入を行う。また、定期的に受信データをダウンロードするため、調査地への交通費や、研究論文にまとめる際の資料やデータ整理のための人件費や論文投稿に関わる費用などに使用する計画である。
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