研究課題
ヒマラヤから西日本にかけて広がる照葉樹林帯では、焼畑における雑穀やイモ類の栽培、茶葉や漆の利用、高度な竹の加工技術など、特徴的な植物資源利用がみられる。また照葉樹林帯とその周辺は、イネやソバなど重要な栽培作物の起源に関連する地域であり、さらに世界の生物多様性のホットスポットの一つである。しかし近年、外部からの人や物の流入が増加し、それに付随して外来植物が分布を拡大しており、地域の植生や生業への影響が考えられるため、その実態を調査した。インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州では、道路工事、焼畑による火入れ、家畜の導入に付随して、ヒマワリヒヨドリ、ツルヒヨドリ、Solanum viarumなどが拡大していた。S. viarumはウシに散布されて田畑に広がり、刺があるため農作業を困難にする一方、その果実は歯痛の薬として利用されていた。ラオスではヒマワリヒヨドリやS. viarumも同様に確認されたほか、北部山地でニトベギクの拡大が顕著であった。ニトベギクは茎葉がパクチョイやハクサイ畑の緑肥として利用されていた。メコン川沿いに急速に分布を拡大するMimosa pigraは、その材が薪として利用できるものの、刺のある茎葉を水辺に密生させるため、漁撈活動を困難にしていた。照葉樹林帯以南の大陸部アジアに生育する外来植物の多くは、南米原産であった。一方、ボリビアの標高1700メートルから5000メートルの中高地では、セイヨウタンポポやノゲシなど、ヨーロッパ原産の外来植物が多く確認された。住民はセイヨウタンポポを在来種だと認識し、野菜や薬として利用していた。照葉樹林帯の植生は、外来植物のさらなる拡大によって改変されると考えられるため、今後も継続調査が必要である。
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Agriculture, Ecosystems and Environment
巻: 202 ページ: 42-47
http://dx.doi.org/10.1016/j.agee.2014.12.011
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