研究課題/領域番号 |
23710289
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
任 哲 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (90434381)
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キーワード | 国際情報交流 / 中国 / 政治学 / 中央地方関係 |
研究概要 |
本研究は、現代中国で社会問題となっている「拆遷」(Demolition)と「徴地」(Land Expropriation)を事例に取り上げ、中央・地方関係のアプローチから問題発生のメカニズムを解明し、現代中国研究における「中央・地方関係」を再検討するものである。従来の「中央・地方関係」研究では「中央政府vs.省政府」の二層構造が基本的な分析方法であったが、本研究は基層政府に注目することで、二層構造をさらに発展させ「中央政府・省政府・基層政府」の三層構造を主張する。そして、三層構造の中でTop, Middle, Street レベルの官僚の行動パターンを明らかにすることで、複合的な中央・地方関係図を提示するものである。 平成24年度の主な研究成果は三つ挙げられる。まずは、中国の土地問題を事例に中国の中央・地方関係を分析した学術著書が出版できたことである。この著書では本研究が掲げる目標である「三層構造」を全面的に議論しただけではなく、中央・地方関係に関する先行研究及び土地関連法案に関する整理(2008年まで)が行われた。次に、Streetレベルにおける官僚の行動パターンに焦点を絞って議論を展開した研究論文が掲載されたことである。厳しい競争下にある県・郷鎮レベルの官僚行動と競争が少ない村レベルの村長・党書記の行動を比較した当該論文は基層政府を理解するに当たって重要なヒントを提供している。最後に、基層における政策過程を理解するために、重慶・厦門・広東での事例を比較研究した。都市再開発過程で頻繁に発生する住民の陳情行為が政策過程にどのような影響を与えるかを分析したこの研究は基層レベルにおける政策過程の全体像を理解するに重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は日中関係が良好ではないことから夏に予定していた現地調査がキャンセルになった。また、インタビューする相手がいろいろな理由でインタビューを拒否することが相次ぐ。解決策として現地情勢に詳しい大学の専門家及び新聞記者と交流し情報を補っている。また、一部の専門家を日本に招聘して意見交換する機会を得ている。今後の研究では現地の関係者だけではなく、専門家との交流にもっとウェイトを置きたい。 関連資料のデーターベース化作業については学術著書出版と供に進めてきたので、当初の計画より進んでいる。今後の研究では2008年以後のデータを主に収集し、既存のデータに追加する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では夏と冬に2回の現地調査を予定していたが、今後は現地調査の回数を増やし、大学の専門家と新聞記者との話す機会も増やしたい。今までは総合大学の専門家と話すのが中心で、地方の大学、特に地方における党校の専門家と話す機会が少なかった。沿海地域の党校はアカデミックレベルが高い上、現地情報に詳しいので、今後はこの部分にもっと力を入れたい。 平成25年度は研究の総仕上げ段階であるので、積極的に国内外の学会で今までの研究成果を発表していきたい。中国国内においては現地調査期間中に小規模なワークショップを組織し意見交換することで、研究成果の価値を確かめたい。 関連資料のデータベース化作業については、効率を上げるために、適時にリサーチアシスタントを雇い作業を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は日中関係の悪化により夏に予定していた現地調査がキャンセルされた。これを理由に使えなかった研究費は平成25年度の現地調査に使いたい。当初は現地調査を年に2回計画したが、平成25年度は現地調査回数をさらに増やす予定である。
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