研究課題/領域番号 |
23710292
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
兒玉 香菜子 (児玉 香菜子) 千葉大学, 文学部, 准教授 (20465933)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 中国 / 内モンゴル / 国際情報交流 / 砂漠化 / 都市化 / 市場経済化 / 生態移民 |
研究概要 |
本研究の目的は、中国内モンゴル牧畜民の都市化の動因とその過程を自然環境災害「砂漠化」と国家環境政策「生態移民」に着目して明らかにすることである。そのために、以下3項目の研究計画を実施した。(1)資料収集:都市化、移民、災害、中国政策に関する統計・文献資料を収集した。国際会議への参加を通じて、最新の研究動向などの情報収集が可能となった。(2)海外調査:中国内モンゴル自治区オルドス市とアラシャー盟にて、実地調査を実施した。オーラル・ヒストリーによって、人民公社化、その解体を経て現在に至るまでの都市化過程とその動因について明らかにすることが可能となった。また、中国内モンゴル自治区シリンゴル盟で開催された国際会議への参加・報告に際し、シリンゴル盟における生態移民の現状について調査をおこない、新たな知見を得、調査対象地の相対化が可能となった。(3)研究成果の発信:中国内モンゴルにおける生態移民および砂漠化問題、それによる牧畜民の都市化について、国内外合わせて6回報告をおこない、研究成果の発信につとめた。奥田進一准教授(拓殖大学)の科研プロジェクトとの合同国際シンポジウム「近代的所有権によるコミュニティの変質~体制移行と近代的法整備による中国・モンゴル社会の方向性~」を開催した。それにあわせて、内蒙古社会科学院民族研究所副所白蘭教授を招聘した。内モンゴルのトナカイ牧畜民エベンキ族の環境政策と都市化過程について講演していただくとともに、内モンゴルの都市化問題について意見交換をおこなった。牧畜民の都市化がモンゴル牧畜民だけでなく、他の少数民族でも進行していること、国家環境政策が都市化の動因となっていることが明らかになった。分野を超えた学術交流という点でも大変意義があるものであった。その重要性を改めて認識する機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集、海外調査、論文および研究報告による研究成果の発信に関して、十分その目的を達成することができた。 文献資料の収集では、モンゴル語および中国語、英語文献など貴重かつ重要な資料を収集することができた。海外調査においても、来年度につながる課題の発見もふくめて充実した実地調査となった。国際シンポジウムをはじめとする国際会議への参加・報告は6回を数えた。うち海外における報告が5回、招聘講演が2回である。国内外の、かつ、異なる分野の研究者との学術交流は研究成果の発信だけでなく、資料収集、新たな共同研究の展開という点でも大いに有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、資料収集、海外調査、国内外での学術発表をおこなう。具体的には下記のとおりである。(1)都市化、災害、移民に関する統計・文献資料を国内外で収集する。とりわけ、サステナビィティに関する資料収集をおこなう。(2)中国内モンゴル自治区オルドス市とアラシャー盟でフィールド調査を実施する。昨年度の調査で、現在だけでなく、人民公社化とその解体以後の社会変動も含めて考察すること、完全に都市へ移住する家族はむしろ少数派で、草原にとどまる家族、家族の一部のみの都市への移住など、都市化のプロセスとその動因は地域でも、世帯でも大きく異なることが明らかになった。その背景には、砂漠化や政策だけでなく、家族構成、親族関係などさまざまな要因がある。実地調査とオーラルヒストリーによって、多様な都市化過程とその詳細な動因の解明に焦点をあてる。(3)国内外の学会、国際シンポウムで研究成果を公表する。6月に日本文化人類学会、9月にモンゴル国とロシア連邦ブリヤートでの国際会議、10月にインディアナ大学での国際会議で研究報告をおこなう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画にあわせて、研究費の使用計画はおおきく、(1)資料収集、(2)海外調査、(3)国内外での学会、国際会議での報告の3つである。(1)資料収集:日本語だけでなく、英語、中国語、モンゴル語の関連する文献資料を国内外で収集する。(2)海外調査:中国内モンゴル自治区オルドス市とアラシャー盟でそれぞれ3週間程度の実地調査を予定。近年の急激な物価上昇とガソリン代の値上がりを考えると、車両借り上げ代による出費がかさむことが予想される。(3)海外ではモンゴル国とロシア連邦で報告を予定しており、その旅費を計上する。
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