最終年度である平成25年度にはこれまでの調査研究を受けて資源開発に焦点を当て、中国内モンゴルでフィールド調査を2回に分けて実施した。都市化要因として、1980年代から実施された土地分配が大きく作用していることが明らかになった。さらに、近年の新しい兆候として、資源開発などによるインフラ整備の結果、草原の郊外化が進んでいることが明らかになった。 これら成果を踏まえ、モンゴル牧畜民の都市化及び都市経済への適応とその諸問題をテーマにした蒙古文化与環境座談会(ワークショップ)を内モンゴル師範大学(中国フフホト市)で開催した。さらに、都市化だけでなく、モンゴルの教育と言語、内モンゴルの現状と課題をテーマにした研究会を主催した。ほか、日本文化人類学会第47回研究大会、第6回ウランバートル日モ国際シンポジウム「モンゴルにおける鉱山開発の歴史、現状と課題」(2013年9月6日@モンゴル国ウランバートル)、「第28回北方民族文化シンポジウム 環境変化と先住民の生業文化-家畜飼育・牧畜における適応-」(2013年10月5日@北海道立北方民族博物館)など国内外の計9つの研究集会でこれまでの研究成果を報告した。また、著書2本、論文4本にまとめた。そのうちアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明叢書10として刊行した『極乾内モンゴル・ゴビ砂漠、黒河オアシスに生きる男たち23 人の人生』は23人の牧畜民のオーラルヒストリーをモンゴル語と日本語で刊行したもので、都市化および環境変化、生活変容を知るうえでも貴重な一次資料である。
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