研究課題/領域番号 |
23710300
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
カビル モハマド フマユン 広島大学, 国際協力研究科, 研究員 (50596773)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | マドラサ / 教育の発展 / ムスリム / 南アジア |
研究概要 |
研究の初年度となる2011会計年度には、インドとバングラデシュの、二つのフィールド・ワークの実施を計画した。くわえて、研究上の発見について国際会議において発表を行った。研究の理論的強化のため、さまざまな学術論文の収集も行った。国家による改革の取り組み、非公式のイスラーム宗教学校への草の根の支援、それら施設へのより大規模な宗教集団および諸派閥からの外的支援という三つの見地から、特にイスラーム宗教学校に注目しながら、インドのマイノリティであるムスリムの教育の発展の問題点と可能性についての分析に取り組み、その成果の一部は、カナダのウェスタン・オントリオ大学で開催されたイスラームと民主主義に関する国際会議において発表されている。宗教的に教育されたムスリム学者の社会的・政治的な含意に焦点を当てたこの報告は、ケンブリッジ出版の会議録として編纂、出版される予定である。 以上のように、今年度においては、インドとバングラデシュにおけるフィールド調査と並行して、海外の国際会議での研究発表を進め、当初の計画に沿って研究業務を遂行することができた。これらの研究成果は研究プロシーディングとして近日公刊される予定である。このように、今年度の研究計画全体において、初年度に予定した研究プランに沿って順調に業務を遂行することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度には、インドのニューデリーとラクナウの二地域においてフィールド・ワークを実施した。それらの地域において、学校教育に携わる複数の公的組織とイスラーム宗教学校(マドラサ)への現地調査を実施した。このフィールド調査資料に依拠し、現在、非公式のイスラーム学校に見られる宗教性の存立構造について検討を深めると共に、それらが現代インドの近代的・世俗主義的な学校教育機関とどのように競合/共存しうるのか、というテーマのもとに論文を執筆した。これにより、これら非公式の教育機関に対しては形式上の承認が与えられているにもかかわらず、いくつかの学校は、ジャミア・ミリア・イスラミア大学やジャワハルラル・ネルー大学のような公立大学の入学試験の受験資格をもつ学生として受け入れていることが分かった。さらに、さまざまな宗教集団と諸派閥がインドにおいていくつかのイスラーム学校を運営しているという事実も判明した。州ごとに状況が異なっているにもかかわらず、インド政府はこれらの機関を対象とした改革に着手している。ラクナウを拠点とするウッタル・プラデシュ州にある「マドラサ教育協議会」への訪問中、コミュニティ・レベルの教育施設を州政府の望む形で改革へ導くための、州によるイスラーム宗教学校支援という最近の試みを調査した。これについては、次回の日本南アジア学会で発表する予定である。また、インドにおけるいくつかのイスラーム宗教学校への訪問中、これら教育機関への在地コミュニティによる支援について理解を深めた。インドにおいてマイノリティであるムスリムは、彼らの文化と教育を維持していくためにも宗教教育を営む権利があるとの認識を高め、それを学校教育の現場に投影している現状が明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
この研究事業はさらに二年間継続の予定である。研究計画に従えば、2012会計年度にはパキスタンとインドにおいてフィールド調査を実施する予定となっている。さらに、国際会議や国内研究会において研究報告を行う予定であり、また研究成果の公刊に向けた努力を継続し行う次第である。2013年の最終会計年度には、パキスタンのみのフィールド調査を継続し、国際会議および国内のシンポジウムにおいて研究成果の発表を行う予定である。昨年はフィールド調査のために多くの時間を費やしたが、今年も、南アジアにおける三年間におよぶ研究活動から得られた研究上の発見に基づいて、研究成果の還元、本の出版に向けた努力を継続していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年、予算はおもにパキスタンとインドにおけるフィールド調査と国際会議の出席に支出される計画である。予算のうちいくらかは、フィールド調査時の研究補助者の雇用にも支出されることになる。2012年会計年度においては、文献等の購入を限定的なものとし、成果の還元に向けた準備により多くの努力を注入する予定である。
|