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2012 年度 実施状況報告書

東南アジアのタケ類をモデルとした人文景観の形成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23710302
研究機関大阪府立大学

研究代表者

大野 朋子  大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (10420746)

キーワードタイ北部 / 中国雲南省 / ラオス / 生物文化多様性 / 民族植物学 / 人文景観
研究概要

地域固有の人文景観の構成種である植物の多様性が、地域原産の植物、地域外からの導入植物、民族文化に付随して移動する植物から成り立つことを実証するために24年度は民族植物学的フィールド調査を中心に行った。これまでの調査から、Hmong族は、葬儀に必要な伝統楽器「ケーン」の材料となる温帯性のタケ類(Sinobambusa intermedia)を民族の移動に伴って持ち運び、栽培しているこが明らかになってきた。この実態についてさらに精度をあげるためタイ北西部(Nan郡)と北部(Fang郡)周辺でのHmong族を中心に聞き取り調査および証拠標本の収集を進めた。また、同時にHmong族以外の少数民族、Lisu族とRafu族、Aka族でも同じようにタケ製の伝統楽器について、その材料、導入経路、利用目的などの聞き取りを行った。調査の結果、山岳部の比較的涼しい場所に住んでいるHmog族の集落には、ほぼ確実にS. intermediaの栽培を確認できた。このタケ以外にも10種類程度のタケ類を利用していたが、これらはほぼ自生種で、必要な時に山採りしていることがわかった。このことからもS. intermediaはHmong族にとって非常に重要なタケであることが言える。一方、Lisu族、Lafu族、Aka族はS. intermediaを利用せず、栽培もしない。彼らは集落周辺の山に自生するCephalostachyum virgatumを山採りし、楽器の材料としていることを確認した。
得られた結果を整理し、種生物学会に参加して成果発表を行い情報交換を行った。また、『栽培植物の自然史II』(山口裕文編)の「多目的植物タケの民族植物学」の部分について執筆し、タイ北部の少数民族が祭祀に利用するタケ製の装置について論文として公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タイ北部における民族学的フィールド調査では、24年度新たにHmong族13箇所、Lisu族4箇所、Lafu族8箇所、Aka族2箇所の集落で聞き取り調査および証拠サンプルの収集を行うことができた。Hmong族についてはこれまでとあわせて31箇所の集落で情報を集め、31箇所中22箇所の集落でSinobambusa intermediaの栽培が行われていることが明らかとなった。これらの情報は関連学会で発表を行って一定の成果を上げており、概ね順調に研究を進めている。予定されていた中国での調査は、政情不安のため急遽中止となり達成できず、重要なタケ類に関しては分子同定に至っていない。しかし、S.intermediaについては、特有の形態的特徴を見つけており、この種の同定には問題ない。

今後の研究の推進方策

タイ北部で収集してきた情報については取りまとめを行い、必要に応じて補足的な現地調査、確認を行う。Hmong族のケーンのタケが自生、あるいは聞き取りにより持ち運ばれて来たとされる中国雲南省もしくは中国貴州省、ラオス中央部で生活するHmong族の集落においてSinobambusa intermediaの栽培の確認と証拠サンプルの収集を行う予定である。景観構造の数量化については前年度に引き続き論文を執筆中である。関連学会で成果の研究発表と論文の作成を行う。

次年度の研究費の使用計画

24年度は、中国と日本との政情不安により予定されていた調査が出来なかったことから、研究費の一部を次年度に繰り越した。25年度は繰り越した予算と併せて中国、ラオス、タイへ現地調査を行い、英語論文の作成のために英文校閲費等の予算、学会発表に関わる経費を計上する

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] タイ北部の少数民族のもつ「六角星」2012

    • 著者名/発表者名
      大野朋子・山口裕文
    • 雑誌名

      形の文化研究

      巻: 7 ページ: 1-7

    • 査読あり
  • [学会発表] 東南アジアにおける少数民族の伝統的竹利用とタケ類の人為的分布2012

    • 著者名/発表者名
      大野朋子・山口裕文
    • 学会等名
      第44回種生物学会
    • 発表場所
      滋賀県
    • 年月日
      20121208-20121208
  • [図書] 多目的植物タケの民族植物学:『栽培植物の自然史II』(山口裕文編)2013

    • 著者名/発表者名
      大野朋子
    • 総ページ数
      360
    • 出版者
      北海道大学出版会

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公開日: 2014-07-24  

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