研究課題/領域番号 |
23710308
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
市川 哲 立教大学, 観光学部, 助教 (40435540)
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キーワード | マレーシア / サラワク州 / 観光人類学 / 手工芸品 |
研究概要 |
2012年度は日本国内での文献研究と資料収集を行った。特にマレーシア研究、サラワク研究といった地域研究に関する先行研究や関連資料の収集に加え、文化人類学、観光人類学、観光社会学、トランスナショナリズム研究等の関連分野の先行研究の収集および整理を行った。その結果、東南アジアにおける伝統的な在地の民族集団や地域集団の相互関係とそれを通した商品連鎖は、現代的な観光に関する土産物の取引や観光客の在地コミュニティへの訪問といった現象の中にもある程度反映されていることが明らかになった。同時に観光土産物の制作や販売、およびエスニック・ツーリズムにおける観光客の少数民族コミュニティの訪問に関しては、地域社会におけるミドルマンの存在や州政府、連邦政府等が果たす役割が大きいこと、従来の観光人類学や観光社会学、エスニック・ツーリズム研究や先住民観光研究が強調してきたように、必ずしも国外から到来する観光客が在地の文化や社会、アイデンティティ等に影響を与えるとは限らず、それ以上にマレーシア国内の人々、特に西マレーシアの都市住民や観光客からの影響や、在地社会の住民も観光土産物として手工芸品を作成すると同時に、それらを自分たちの婚姻儀礼等で使用していることが明らかになった。また2012年8月から9月にかけてマレーシアを訪問し、現地大学および研究機関での資料収集と現地研究者との交流、およびフィールドワークを行った。そしてその成果は国内外の学会での研究発表および学術論文の執筆により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属大学における夏季休暇中および休日中に行う必要がある業務のため、当初予定していただけの期間を現地調査に充てられず、文化人類学的なフィールドワークを行うために十分な期間が確保できなかった。そのため必要とされる密度の調査を行うことができなかった。だが日本国内での資料収集や先行研究の収集に力を入れることにより、計画している研究の遂行に尽力した。また研究の途中経過を国内外の学会で研究発表した。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は当初の予定通り、マレーシア、サラワク州および周辺地域やエスニックツーリズムや手工芸品の生産・流通・販売が在地の社会関係の中にいかにして取り込まれているかという研究テーマと関連のある地域での現地調査を計画している。また同時に日本国内での資料収集と分析を引き続き行う予定である。さらに研究成果を国内外の学会や会議、研究会等で公表することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」で述べたように、2012年度に予定通りの現地調査を行うことができず次年度使用額が生じたため、2013年度は予算に応じた研究活動を行うことを計画している。それにより、マレーシア、サラワク州における先住民や華人、マレー人といった民族集団間の関係や、河川上流域、中流域、都市部といった異なる地域の地域住民の間に見られる相互関係の中で、観光土産物や手工芸品、エスニックツーリズムがいかにして取り込まれ、在地の社会関係の中に接合されるか、あるいはそれらを変容させ新たな商品連鎖網や社会的ネットワークを構築しているのかに注目した文化人類学的・観光人類学的フィールドワークを実行し、その成果を分析することを計画している。
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