研究課題/領域番号 |
23710311
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
西本 太 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (60442539)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ラオス / 小集団人口 / 妊産婦保健 |
研究概要 |
本年度は、過去の人口記録をもたない小集団人口を対象に、現地での聞き取り調査から過去の人口変化を復元するために必要な質問表を作成し、それをもとに調査員をトレーニングしたのち、4名の調査員といっしょに実際に現場でのデータ収集に取り組んだ。その結果、2地域・7集落における441人の女性の再生産歴に関するデータ、ならびに1集落16世帯の悉皆調査による過去50年間の人口変化に関するデータが得られた。一方で、これらのデータを効率的に集計・解析するためのデータシートの開発にも取り組んだ。従来は人口学的諸属性を個人ごとに並べただけであったため、分析のたびに、目的に応じて手動で計算しなおす必要があったが、新しい集計シートにより、必要な指標が容易に計算できるようになった。また、このような人口データ収集システムの整備と並行して、地域住民の生業・生活の変化に関する聞き取り調査も実施し、詳細なデータを得た。その結果、保健センターの開設や出稼ぎの本格化といった重要な出来事が、出生率や乳幼児死亡率の変化と対応しており、それらの人口学的指標によって裏付けられることが明らかとなった。これらの調査研究の成果は、ラオスで開催された2つの国際研究会議(H23年6月ならびに9月)や生態人類学会(H24年3月)をはじめ、いくつかの研究会で発表した。そこでの国内外の研究者との討議から、データ収集の精度を向上させる技術的な工夫や、研究枠組みと今後の方向性に関する重要な示唆が得られた。さらに、タブレットパソコンの導入により、データ収集そのものを電子化する試みにも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査員の訓練が当初の期待以上にうまく行ったため、初年度としては十分なデータを収集できた。また、集計シートを改良したことも、大量のデータを処理する上で大きな効果があった。この工夫により、収集データを短時間で成果報告に加工できるようになったため、専門家の意見を短時間のうちにフィードバックして、その都度、課題設定をすることが可能になった。一方、悉皆調査で集落を丸ごと、人口復元する計画は、時間の都合で1村しかできなかったが、この調査により、調査手順の効率化に向けた見通しが得られたことは大きな収穫だった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現場でのデータ収集から、集計・分析までを一体的に電子化したデータシステムの構築に取り組むとともに、集落の悉皆調査による人口復元データのサンプル数を増やし、それを通じて調査手順を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度使い残した研究費は、電子データ収集システムの開発と、集落の悉皆調査に必要な質問票作成、調査員トレーニング、ならびに現地調査実施のための費用であり、次年度の研究費と合わせてこの2つの事業に集中的に取り組む。
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