研究概要 |
本研究は世帯復元の手法により、過去の人口記録をもたない、ラオス中南部の農村地域における人口変動の復元を試みた。そうして得られた人口動態を地域の歴史や、人口再生産と食料生産にかかわる行動・制度の変容と関連付けて考察し、人口変動と環境変化の相互関係を地域の文脈において明らかにすることを目指した。 本年度は3回ラオスへ出張し、現地調査員とともに長期追跡データの整備に取り組んだ。2012年7-8月には、サワナケート県の山村20村を訪問し、住民5,000人分の人口データを更新するとともに、120村の村落保健ボランティアを招集し、各村の現状について聞き取りを行った。また、2012年9月には、世界銀行ラオス事務所などで研究分野・対象地域を同じくするラオス国内外の研究者・実務者と本研究の進捗と展望に関する詳細な情報交換を行うとともに、調査地で前回調査での聞き洩らしやあいまいな点に関する補足調査を行った。これにより、成果取りまとめに向けた重要な情報と知見が得られた。そして、2013年1-2月には調査地を再訪し6村169世帯で人口データを更新した。 これらの調査結果は、文化人類学会第46回研究大会(2012年6月23-24日@広島大学)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・共同研究「社会開発分野におけるフィールドワークの技術的融合を目指して」(2012年7月1日@東京外国語大学本郷サテライト)、また、長崎大学熱帯医学研究所・熱帯医学研究拠点研究集会「熱帯地域における人口登録・動態追跡調査システム(HDSS)を用いた複合分野横断研究」(2012年10月27日@総合地球環境学研究所)等で研究発表を行い、人口変動を通してみた地域史の特徴について討議した。同時に、調査結果に基づく論文執筆にも着手した。
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