研究課題
研究対象3地域において、フィールド調査、生体サンプル採集及び分析を行った。それぞれ実施結果は以下となる。第一、フィールド調査では、主に対象村落の選定作業を中心として実施した。各地域において、(1)ゴム・プランテーション及び野菜栽培で開発を行っている村(政府主導)、(2)ゴム及びタブノキのプランテーションで開発を行っている村(外国業者)及び(3)国境を超えゴム・プランテーションを行っている村(自主開発)である。代表者は共同研究と同行し、各村落の訪問調査を実施した。第二、生体サンプルの収集及び分析である。サンプルの分析は主に(1)と(2)の村を対象として実施した。対象(1)の村落において村民健康診断を行った後、唾液中のコルチゾルの分析で開発度と村民ストレスの関係を評価してみた。その結果は、開発が進行している村落住民は、開発がほぼ定着している村落住民より高いストレスを示している。開発進行度合いにもたらされた村落間格差はこのような結果をある程度寄与していると推察する。対象(2)の村落において、唾液サンプルを収集したほか、健康診断、血液及び尿よるマラリアの診断も実施した。唾液の分析結果は、当地域の住民のストレスが相対低いことを示していた。一方マラリア検査の結果は50%前後の住民はマラリア陽性或いはかつて感染していたことを示していた。村落住民のマラリア陽性とその住居位置の関係性を解析してみた。結果は、村落住民のマラリア陽性と各自住居周辺の家屋数及び家屋の分布と関連していることを示していた。かいつまんでいえば、対象(1)政府主導の開発は村落住民の生活改善に寄与しているものの、住民に新たな健康問題(ストレス、生活習慣病など)をもたらしつつある;外国業者が主導する開発は現地の有力者に利益をもたらしたものの、一般の住民の生活改善をまだ果たしていない。こうした背景の中に、今後村人の対応及び開発モデルを見守る必要がある。
3: やや遅れている
対象村落と現地共同研究者の選定及び調査許可の確保は研究実施が計画よりやや遅くなった原因である。本研究は対象としている村落開発タイプ3(村落住民国境を越え、隣国の土地を借りてプランテーションを行う開発タイプ)の選定は、想定されていた状況より難航していた。こうした調査は対象村落住民のインタビュー及び環境調査などに国境両側の政府或いは研究協力体制を構築しないといけない。平成23年度では、こうした作業に時間を費やし、対象タイプ3における本調査を展開できなかった。現状では、これらの困難の克服に努めると同時に、優先的にラボ・ワーク及びすでにデータの解析作業を行っている。
平成24年度において実施する予定の作業は以下のように考えている。第一、平成23年度、遅れている対象村落タイプ3(村落住民国境を越え、隣国の土地を借りてプランテーションを行う開発タイプ)調査研究体制の構築及び本調査の実施。第二、対象村落タイプ1(政府主導の開発)、対象村落タイプ2(外国企業主導の開発)において、平成23年度の調査結果を踏まえて、補完的な調査を実施すると同時に、収集したデータの解析を勤める。第三、アジア農村開発モデルの構築に努める。本研究において、重要なのは南中国の急速な開発及びその影響を受けている東南アジアにいろいろな開発タイプの村落を調査してきた。今年度の後半にこうした調査研究結果をまとめ、開発モデルのみならず、村落住民及び環境の面から開発モデルの評価を行う。第四、調査及び分析結果にもとづいて、論文の執筆及び国際学会の発表を通じて調査研究の結果の公表に努める。第五、調査対象地の研究協力機関或いは研究協力者を通じて、現地の政府機関に研究の成果を報告し、現地の政策策定に貢献する。
24年度には、下記のように研究費を運用する予定である。第一、現地調査:23年度に遅れた対象村落タイプ3の現地調査及びタイプ1とタイプ2の補完的な現地調査に重点的に研究費を運用する。第二、研究結果発表:論文の作成及び学会発表の旅費に研究費を運用する。第三、データ解析及びサンプル分析に必要な消耗品の購入などに研究費を運用する。
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Remote Sensing Letters
巻: 3 ページ: 551-556