平成24年度にはラオスを中心として、研究調査を実施した。ラオス対象村落では、中国の影響はどんどん強くなっている。中国業者参入の開発はもともとラオス北部を中心とし、展開されてきたが、近年、ほぼラオス全域に及んだ。研究代表者は注目してきたのは、パラゴムなどを中心とした外部開発による地域住民社会への影響である。以下はそれぞれ述べる。第一、食料生産基盤の喪失。外部業者はローカル政府と組んだ開発は主流である。ゴム栽培の展開によって、対象村落の50%程度焼畑地は取り上げられた。焼畑農耕を主な生業としている住民たちは、生業の変更を余議なくされている。第二、労働力調達による人口移入。急ピッチなゴム開発にともない、労働力を調達する必要がある。しかし、労働紀律の不評で、開発業者はほとんどローカルな住民を雇用する予定がないようである。そこで、雇用のメリットをえられない上、村人は、外来人口にもたらされる各種の問題を直面せざるをえなくなる。第三、健康問題。対象村落では最も重要な健康影響はマラリアである。対象地域熱帯熱マラリアの罹患率は5%前後である。開発による土地被覆の変化とマラリア感染リスクの関係を調査した。また分析の段階であるが、現時点にいえるのは、村落周辺の植生(250m)の低下はマラリアリスク感染の下降に関連している。ゴム栽培の展開は間接的に地域マラリア感染状況の改善に貢献しているかもしれない。 一方、中国対象地の海南島では、土地資源の枯渇と労働力の流失で、村落のゴム開発は停滞しつつある。対象村落の周辺の森林はほとんど保護区となり、合法的に開発できる土地はほとんどなくなっている。同時に、急速な観光開発の背景に、村落青年はほとんど出稼ぎに行き、村落は中高年しかいない「空巣」になっている。政府は住宅建設補助、税金の免除などの優遇措置を取ってきたが、村落の開発が進んでいないのは現状である。
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