研究課題/領域番号 |
23710315
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
渡部 周子 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 特別研究員 (70422582)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ジェンダー / 女子教育 / 美術史 |
研究概要 |
明治期の女子教育の制度化に際する、西洋科学思想の受容を明らかにすることが、本研究の目的である。ダーウィン進化論では有色人種である日本人は劣等人種であり、知的能力、身体能力だけでなく、生殖能力も劣るとされた。民族の繁殖と進化という問題に明治政府が無関心であったとは考え難く、将来の母体として期待される「少女」期の教育において、科学思想は決定的な影響を与えたとする仮説を抱くにいたった。これを解明するため、医師による女性身体への言及を『婦人衛生会雑誌』(後に『婦人衛生雑誌』と改題)を対象に考察した。並びに、『大日本教育会雑誌』『教育時論』等の教育雑誌、教育論(例えば下田次郎、下田歌子、伊賀駒吉郎、井上哲次郎等)や、また医学と教育の連結点である学校衛生の制度化を分析した。その結果明らかになったのは、以下のことである。(1)ダーウィンは、早婚の女子は十分な進化を遂げることができず、子孫の能力を劣等とすると見なした。女子の就学年齢の決定に際し、進化論における早婚否定論が影響した。(2)女子の教育機会を制限するに際し、「出産」こそを女子の本務とし、過度の学術は女子にとって有害であり、生殖能力を害するとする近代医科学が理論的支柱とされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は医科学関係資料、女子教育関係資料の調査に対して、下記の学会報告を行い、成果を示すことができた。(単独)「感情のジェンダー化―近代日本の「少女」期を事例として」第59回関東社会学会大会(於明治大学)平成23年6月19日(単独)「明治期女子教育における科学思想の受容―「生殖能力」の管理という視点から」ジェンダー史学会第8回年次大会(明治大学)平成23年12月10日 報告で得られた知見をもとに、収集した資料の解釈を効率的に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
資料の収集を続行すると共に、分類・解釈を進める。医科学関係資料、女子教育関係資料等の文字資料の調査については本年度、学会で報告を行った。この報告を論文としてまとめることを今後の課題とする。これに際して、不足した資料があることが予想されるので、この点について調査を進める。 上記の作業と共に、視覚資料についての考察を深めるため、美術館等での調査を予定している。第二次性徴期の女性、すなわち「少女」は絵画において、どのように表現されたのか。医科学は「少女」を虚弱な存在だと位置づけたが、「少女」の心身はどのように描かれたのか。今後は視覚資料を対象として、この点についても着目したい。また、雑誌や広告等のマスメディアを通して、大衆に普及した、女性イメージについて考察したい。分析に際して、明治期以降から現代における少女イメージまでをも視野に入れ、比較という視点も導入したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内調査の旅費。書籍等の資料の購入費。電子機器の購入費。複写費。 なお、千葉大学から島根県立大学短期大学部に移動することが決定したため、調査地として西日本ではなく、今後困難となることが予想される首都圏での調査を進めた。このため、次年度に使用する研究費が生じたが、この研究費は、島根から東京への旅費として、使用する予定である。
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