平成26年度は、最終年度にあたり、明治期における女子教育の制度化に際する、西洋科学思想の影響に関する知見を補強し、より確実なものとすることを意図し、引き続き、1、2に挙げた調査を行い、3によって問題の相対化を図った。また、今後の研究の展開として、4に発展的な課題について記した。 1、教育論、医科学関係の資料を対象とする調査:明治期における女子教育の制度化に際して、進化論に基づく西洋科学思想が理論的支柱となったとする知見を補強するため、教育論、医科学関係の資料を対象とする調査を行った。また、医科学の学説を根拠として、教育家が女性の特質と位置づけたもののなかに、「愛情」深さと「感動性」の強さ、「身体を飾る」性質があるとする知見を、発展的な課題(4に後述する)に接続することを試みた。 2、絵画、写真、挿絵、広告等の図像資料の調査:視覚表象として描かれた「少女」像を分析し、医科学が虚弱と規定した「少女」の心身が、どのような形態で表現されたのか調査した。 3、明治以降より現代の「少女」イメージに関する調査:研究課題をアクチュアルな意義という視点から捉え、相対化することを意図し、明治以降より現代に関する調査を行った。 4、発展的な視点の獲得、ならびに今後の展開について:本研究課題から得た視点を通して、新たな展望を得ることができた。それは、他者を「愛しい」と思う感情と、他者から見て「愛らしい」ことを意味する「可愛い」は、1に挙げた女性の特質と位置づけられた性質のうち、「愛情」深さや「身体を飾る」性質と、相関する部分があるのではないかということである。このことから、「かわいい」をジェンダー規範であり、教育的理念として捉え直すという、発展的な課題を設定することとなった。
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