研究課題
本研究では、1万5千人の女性サンプルについての、60万ヶ所に及ぶ遺伝子多型情報を用いて、月経関連項目(初経年齢・閉経年齢・月経周期)に影響する遺伝因子を明らかにすることを目的としている。平成23年度においては、まず解析対象となる9万人の女性につて臨床情報の整理を行った。月経関連項目のデータを集計し、登録時の年齢、生年、月経関連項目の年齢を元に、データ間に齟齬を認める症例を排除した。さらに外れ値(+-4S.D.)を除外することでデータのクリーニングを行った。さらに月経終期に影響を与えうる因子(生年、現病歴、既往歴、BMI(身長・体重)、妊娠・出産歴の有無、抗癌剤治療の有無、喫煙歴、飲酒歴、食生活、運動)の情報を抽出した。ホルモン療法歴と手術歴のある患者については解析結果に影響を与える可能性を考慮し、閉経年齢、月経周期の解析対象から除外した。最終的に生年を交絡因子とし線形回帰モデルを用いて各月経関連項目に関連を認めるSNPの同定を試みた。1万5千人における解析の結果、ゲノムワイドの有意水準(p値<5x10-8)をクリアするSNPは同定されなかった。そこで上位の6SNP(p値<1x10-6)について、独立したサンプルを用いて検証を行ったところ、ゲノムワイドの有意水準をクリアしないものの、閉経年齢とより強い関連を示すSNPが同定された(5.7 x 10-8)。
2: おおむね順調に進展している
2年間の研究計画で当初予定していたゲノムワイドレベルのスクリーニングと独立したサンプルでの再現性の確認までは終了した事から、研究の進捗・達成度は100%であると考える。しかしながら、今回の解析では各月経関連因子に有意な関連を示すSNPは認められなかった事より、新たな解析を平成24年度に進めたい。
平成24年度は、現在までに最も強い関連を示したSNPについて追加サンプルでのタイピングを予定している。また検出力のアップにより新たな候補遺伝子の同定を目的として、ゲノムワイドレベルでのImputationによるメタ解析を行う予定である。また候補遺伝子解析としては、これまで欧米人で関連を認めるSNPについて、日本人における関連を検討することも行っていきたい。これらの解析によって、各月経関連因子に有意な関連を示すSNPが同定された場合は、そのSNPがどのように月経関連項目に影響を与えうるか機能解析を行う。まず、SNPの周辺領域の詳細な解析を行い、最も強い関連を示すSNPを明らかにした後、その多型が近傍の遺伝子にどのような影響を与えるかを検討する。
平成24年度も、研究経費の大部分を遺伝子の解析費用に充てる。さらに、得られた候補SNPのin vitroおよびin vivoでの機能解析のため、細胞培養関連の消耗品に対しても研究費を使用する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Nat Genet.
巻: 44 ページ: 430-434
10.1038/ng.1109.
Nat Commun.
巻: 14 ページ: 676
10.1038/ncomms1676.
Neoplasia.
巻: 14 ページ: 141-149
10.1593/neo.111700
PLoS Genet.
巻: 8 ページ: e1002541
10.1371/journal.pgen.1002541
J Hum Genet.
巻: 56 ページ: 436-439
10.1038/jhg.2011.35.
Gut.
巻: 60 ページ: 799-805
10.1136/gut.2010.215947
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/nakamura/matsuda/R%20s.html