研究課題/領域番号 |
23710317
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 文香 一橋大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (10367667)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / アメリカ / 社会学 / ジェンダー / フェミニズム / 軍隊 / 暴力 / 自衛隊 |
研究概要 |
平成23年度は8月下旬より、Harvard-Yenching Institute客員研究員として渡米し、ハーバード大学をはじめ、陸軍女性部隊博物館、アメリカ女性軍人記念館、海軍戦争大学博物館等での資料収集を行った。特にフォートリーの陸軍女性部隊博物館では、これまでつかむことのできなかった日本の女性自衛官教育隊設立前の米軍視察の動向に関する貴重な資料を入手し、Harvard-Yenching Instituteにて"A Camouflaged Military: The Japanese Self-Defense Forces and Globalized Gender Mainstreaming"と題する報告を行うことができた。また、先行研究の検討につとめ、国際関係における男性問題をテーマとした論集 Jane L. Parpart and Marysia Zalewski eds., Rethinking the Man Question: Sex, Gender and Violence in International Relations(Zed Books, 2008)の書評を『国際ジェンダー学会誌』に掲載した。アジアの軍隊のジェンダー研究に向けた第一歩としては、兪炳完との共著による「韓国女性軍人のプライドと困難―男性中心的な軍隊規範への順応に注目して」を『国際ジェンダー学会誌』に掲載した。さらに、10月27日・28日にはアーリントンにて開催の「軍隊の女性」会議、3月29日・30日にはニューポートの海軍戦争大学が主催した「女性・平和・安全保障」会議に参加し、関連分野に関する見聞を広めつつ、研究ネットワークの構築につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は陸軍女性部隊博物館の文書館にて、日本の女性自衛官教育隊設立前の米軍視察の動向に関する貴重な資料を入手することができ、今後の研究の指針をたてる重要な手がかりを得た。日米両国の教育・訓練のジェンダー統合および性暴力対策については、Anne W. Chapman, Mixed-Gender Basic Training: The U.S. Army Experience, 1973-2004(2008, U.S. Government Printing Office) および Women in the U.S. Army: An Annotated Bibliography(2002, U.S. Army Research Institute for the Behavioral and Social Science)、Department of Defense FY07 Report on Sexual Assault in the Military(2008, Department of Defense Sexual Assault Prevention and Response Office)を読み進め、性暴力防止・対策局(SAPRO)のチーフであるMary Kay Hertog少将から話を聞く機会にも恵まれた。
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今後の研究の推進方策 |
7月末にHarvard-Yenching Institute Visiting Scholars Program を終了した後はassociate fellowとしての採用が決定されており、1月下旬までアメリカに滞在し、ハーバード大学をはじめとする主要大学図書館および公文書館や関連施設等で資料収集を行う。引き続き、WACの廃止・統合過程および性暴力防止・対策局(SAPRO)設立過程における米国内での議論に関する資料を収集・精査していく。特に、軍隊内外の女性たちの連携が政策推進にもたらした影響に着目した考察を行う。なお、本研究の中間報告として、 University of Massachusetts, BostonのThe Consortium on Gender, Security and Human Rightsにて研究発表を行う予定であるほか、The Asia-Pacific Journal: Japan Focusに論文を掲載予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、アメリカにおける関連施設での資料収集や学会参加に伴う旅費、書籍や不足した消耗品の購入およびその郵送費に充当するため、20万円の前倒し支払い請求を行った。このうち、日本からアメリカへの物品等の郵送回数が当初の予定より減り、15万円ほどを未使用のまま残すこととなった。未使用額は平成24年度のアメリカでの実地調査および書籍等の購入費用にあてる予定である。現在、アメリカ側での調査は当初の予定どおり順調にすすんでおり、平成24年度も引き続き、Harvard-Yenching Institute Visiting Scholars および associate fellowとして、ハーバード大学をはじめとする主要大学図書館および公文書館や関連施設等で資料収集を続ける。1月下旬に帰国し、日本での研究資料の整理と補完に努める。
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