最終年度においては、これまでの研究成果をふまえた総まとめを中心に行った。実証的な調査研究においては、日本社会を対象とした主要な男性雑誌のバックナンバーの内容分析(経時的比較分析)が残されていたので、これを優先的に実施した。その上で、これまでの研究成果やそこで得られたデータ・資料などを、比較の観点から改めて整理しなおすとともに、さらにテキストマイニングなどの最新の手法を用いて、より詳細な分析を行った。 これと平行して、研究成果をまとめていく中で、文献の読解や学会・研究会への参加等を通して、最新の研究動向に関する知見を収集し、それらと照らし合わせながら、全体の総括にあたる論文を執筆した。さらに、同論文については、日本語で執筆したものをベースに、英語に翻訳し、現在、海外の学術雑誌への投稿準備中である。 なお、研究期間全体を通して得られた知見を要約すると以下の通りとなる。すなわち、日本における男性ファッション・ライフスタイル雑誌は、他の社会(今回の研究では特にドイツを対象とした)との共時的比較分析を元にすると、特異で他に類を見ないような存在であり、具体的な内容分析の知見を元にして言えば、他の社会の男性雑誌よりも、日本の女性雑誌に近い存在であるということがわかった。これは、消費へといざなう広告メディアであるとともに、ジェンダーを色濃く反映したメディアであるという2つの特徴においてそのように指摘できた。 一方で、経時的比較分析の結果によると、これも他の社会と比べれば、相対的にはジェンダーの流動化を激しく反映しており、今後に向けて新たなライフスタイルを構想していく上での、貴重な橋頭堡となりうるメディアであることも確認された。 今後は、実証研究を継続しつつ、新たなライフスタイルの構想も行っていく予定である。
|