本研究の目的は、性や生殖のコントロールに焦点を当てることで、アメリカ占領下の日本における「女性解放」政策の歴史的意義を再評価することにある。その際、バースコントロールをめぐる政策を検討する。バースコントロールは出産や家族に直接的に介入することを認める一方で、「女性解放」の基礎ともいえる。つまり女性の「解放」の原点が、女性身体への「介入」をともなうのである。 本研究は、このような両義性をもつバースコントロールの推進が、占領下でいかに行われたのかを明らかにしてきた。その際、(1)日本側および連合国最高司令官総司令部側の資料の調査・収集、(2)GHQ/SCAPの政策立案に際し重要な役割をしたアメリカ人に関する資料の調査・収集、(3)日本のバースコントロール運動に影響を与えたアメリカ人運動家等の資料の調査・収集という3つの側面における資料調査および研究を行った。(1)と(2)に関しては、範囲が比較的限定されるためスムーズな調査を行うことが出来たが、(3)に関してはさまざまなアクターが関わっていたため不十分であった。最終年度の本年度は、(3)のなかでも、占領軍の人口問題コンサルタントとして、プリンストン大学人口調査研究所のノートスタイン(Frank W. Notestein)とトーバー(Irene Taeuber)が来日する際に財政援助したロックフェラー財団の資料を調査した。これらのことから、世界規模の逆淘汰という優生学的な視線から日本の人口増加を問題視した人びとのまなざしが明らかになった。 以上の研究成果をまとめ、占領期の「女性解放」政策の歴史的意義を検討する著書『アメリカ占領下日本の「女性解放」政策と性と生殖のコントロール』(仮)を平成29年度中に完成させる計画である。
|