研究課題
本研究の目的は、デモクラシーの規範性について、主として英米圏の哲学で目覚ましい成果をあげている分析的アプローチに依拠しながら、その全貌に迫ることである。今年度の研究は昨年度までの研究で明らかになった、自由と平等の規範的理念に支えられた(間接)デモクラシーの価値とそれへの動機づけの関係をふまえたうえで、その実践的含意を明らかにすることを目的とした。もっとも規範理論の実践的含意を打ち出すにあたっては、実証的研究との接合を図る周到な議論が求められることから、そのあたりの方法(論)的知見を摂取しつつ、研究を遂行した。その成果は、以下の通りである。まず、デモクラシーが支配する世界において、非理想的世界に適用される正義が福利の本質主義的構想を支持しうるのかどうかを検討した"Is Moderate Essentialism Truly Moderate?" や、市民への動機づけを顧慮するデモクラシーの典型的構想たる熟議デモクラシーが、ヘルスケアの分配的正義を考えるうえでも十分機能しうるのかどうかについて検討した"Justice, Fairness, and Deliberative Democracy in Health Care."は、デモクラシーの実践的含意を検討するものとなっている。ほかには、デモクラシーの中心的理念を提供したロールズに関する研究成果として、「ロールズ-「正義とはいかなるものか」をめぐって-」と「分析的政治哲学とロールズ『正義論』」があげられる。デモクラシーの規範理論を実証理論との接合を意識して研究を進めていくうえで重要な実験的手法に関しては、2013年11月の日本法哲学会で共同研究というかたちで報告し、中国の思想的現状をふまえたデモクラシーと正義の可能性については、首都大学東京の谷口功一氏を招聘し研究会にて報告していただいた。
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政治思想研究
巻: 14号 ページ: 6-32
思想
巻: No. 1079 ページ: 64-71
Public Health Ethics
巻: Vol.6、No.1 ページ: 21-27
http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/103/0010252/profile.html