最も大きな研究成果は、2013年に『かたちある生 アドルノと批判理論のビオ・グラフィー』を出版したことである。これはアドルノの思想がどう生まれ、どう引き継がれていったかという視点から20世紀ドイツ精神史を包括する文献学的分析であり、同時に、生命を巡る現代の議論(バイオポリティクス、バイオエシックス、ライフヒストリーなど)を再活性化する哲学的な試みであったと言える。また研究成果として論文「犠牲者の/についての語り――物語論のための覚え書」が挙げられる。これは現代フランクフルト学派における犠牲者論を紹介するのみならず、この犠牲者というモチーフを哲学的な物語論に組み入れる試みであった。
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