研究課題/領域番号 |
23720013
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 准教授 (10599244)
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キーワード | 哲学史 / 精神物理学 / 強度量 |
研究概要 |
平成25年度はリーマン幾何学と心理学の問題を中心に、それがベルクソン『試論』第2章の多数性の議論にどのように関わっているのか、あるいはそのような関係は(ドゥルーズが『ベルクソニスム』で強調するほどには)見られないのかを研究した。 その結果、まず数学者リーマンは哲学者ヘルバルトの認識論や心理学に傾倒し(一方で自然哲学や形而上学は批判)、当時、リーマンの多様体が感覚の強度量に関連づけられて議論の対象になっていたことが判明した。そしてリーマンはヴェーバーの法則で知られるエルンスト・ヴェーバーの弟である物理学者ヴィルヘルム・ヴェーバーと親しく、精神物理学者のヴェーバーやフェヒナー(彼らは『試論』第一章で批判されている)にリーマンは影響を受けていることも分かった。 そしてこのような多様体の哲学的な議論を批判したのが、『試論』第三章で参考文献に挙げられているJohn Stallo"The Concepts and Theories of Modern Physics"(1882)〔ベルクソンが挙げているのは仏語訳〕である。このことから分かるのは、ドゥルーズは明示していないが、『試論』ではベルクソンはリーマンの多様体論をそのまま受容したわけではなく、受け入れたのだとしてもかなり否定的に受け入れたということである。 そのように考えればドゥルーズが『差異と反復』第五章で強度量を肯定的に論じる際にベルクソンの質概念を(強度量を覆い隠すものとして)批判的に考察していることもうなずける。リーマンが哲学的議論をしていること、それがヘルバルトの心理学に関連が深く、精神物理学の強度量につながること、それが19世紀に議論を呼んでいたこと、そのような背景がベルクソン哲学やひいてはドゥルーズの強度量の概念にまで反響を呼び起こしていること、以上のようなことを解明したことが研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究はほぼ計画通りに進んだが、4年全体の研究としてはやや遅れている。ただし、25年度末には研究1年目(平成23年研究)の成果を学会発表することができ、平成25年度の研究も平成26年度の6月上旬に国際学会で発表する予定である。これらの成果もいずれは学術雑誌に投稿することを考えている。 以上の研究は達成度から見るとほぼ順調といえるが、2年目の研究計画にあるヴァイスマンや新ラマルク主義の進化論についてはまだ調査が遅れている状態にある。また、最終年度の4年目の研究計画(『物質と記憶』の第2章の大脳局在論)については、昨年度フランス国立博物館に出張し、資料収集しているので、それを解読する作業を2年目の研究計画の遅れた分を取り戻すことと同時に進めなくてはならない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年3月に研究1年目の成果を発表したので、今後の研究推進方策としては、まず、平成26年6月に研究3年目の成果を発表する予定である。次に、9月から10月にかけて開催予定の学会や研究会の発表に予定を入れ、そこで2年目の研究成果を発表したい。またこれらの発表をもとに論文を作成し、学術雑誌に投稿をすることにしたい。 平成26年度の最終年の成果については、12月頃の研究会に発表予定を入れるか、学会や研究会に発表するのが間に合わない場合は、直接、本研究の調査研究報告書に内容を反映させることにしたい。最終年の『物質と記憶』第2章の失語症研究は資料が膨大であるから、何か『物質と記憶』第二章の本質的な問題や重要な概念(たとえば純粋記憶や習慣など)に関連する文献に絞って論を構築していくことにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献のコピー代でもっと多額の出費がかかると予想されたが、コピー代の請求の手続きが非常に手間がかかることが判明し、その分で予想された支出を実行していないことが大きい(その他の経費)。また、購入しようと思っていた文献なども最近は著作権が切れてインターネットで閲覧できるものも多くなり、当初よりも費用がかからなかったという事情もある。 コピー代について支出できない分については、最近はスキャナーでよいものがでているので、それを購入する費用と文献の貸借料にあてたい。 またインターネットで閲覧できるものについても、重要資料については購入して手元に置いておいた方が使い勝手がよいため(資料に書き込んだりできるので)、重要な資料に関しては選定を進めて閲覧できるものであっても必要なものについては購入を進めていきたい。
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