研究課題/領域番号 |
23720017
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森田 邦久 早稲田大学, 高等研究所, 招聘研究員 (80528208)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 量子力学の哲学 / 時間論 |
研究概要 |
二状態ベクトル形式を用いた新しい量子力学の解釈を提案した。従来の解釈には、波動関数の収縮や非局所相関、さらに測定前の物理量の非実在という難点があったが、新しい解釈ではこれらの難点はない。本解釈の特徴は、従来の解釈が過去の状態のみから現在の状態が決定されるとするのに対して、未来の状態もまた現在の状態に影響を与えるというものである。このことによって、ある時刻での物理量を測定したときの測定値の確率が1か0になることがわかる。すなわち、その物理量は明確な値を測定前からもっているのである。このことによって物理量の実在が保証される。また、複数の過去に相互作用した系において、一方の測定が空間的に遠くはなれたもう一方の対象に影響を与えるという非局所相関の問題も、未来の測定によって、相互作用を終えた瞬間にもう一方の物理量も決定されていると考えれば、解けることが示された。同様に、波動関数の収縮も必要がないことがわかる。また、量子力学においては因果律が成立しないとされる。そこで、科学的説明の研究として、そもそも因果とは説明の文脈で主観的に持ち出されるものだとした。これらの研究成果は、まず5月に愛媛大学で行われた科学基礎論学会にて発表された。7月にはフランスのナンシーで開催された国際会議にて発表した。また、9月には『量子力学の哲学』(講談社)というタイトルで単著として得られた成果を一般にも公開した。さらに、同月、東京工業大学で、10月には高エネルギー加速器研究機構で、12月には明治大学で、それぞれ招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、新しい解釈について単著としてまとめることができ、さらにそれが評価されて各所で講演を依頼されているので、おおむね順調に進展していると言ってよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
因果概念に関して,これまでさまざまな哲学的議論がなされてきた。因果関係は主観的なもの か客観的なものか、また、因果の向きはなぜつねに過去から未来へ向かうのか(もしくは逆向き 因果―結果が原因に時間的に先行する現象―は存在するのか)などといった問題である。これらの問題について、前年度に得られた新しい量子力学の解釈の観点から考察する。この解釈Iによると、現在の状態は、過去の状態からのみではなく、未来の状態からも決定される。一方で、常識的な見方では、現在の状態は過去からのみ決定されるように思えるし、それは実際にわれわれの経験にあっているように思える。このギャップの説明を、先行研究の批判をまじえながら、発展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
量子力学の哲学や因果に関する哲学的議論に関する書籍の購入が主な使用となる。また、研究発表のための出張費や新しい情報を得たり、研究者同士で議論をするために主な研究会や学会に出席しなければならないので、そのための出張費にも使用される。
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