量子力学の二状態ベクトル形式を用いた新しい解釈によって「アインシュタインのジレンマ」と呼ばれる問題が解決できることを示した。アインシュタインのジレンマとは、「量子力学は不完全か、非局所的かのいずれかである」というものである。従来の考えかたでは、標準的な解釈としては「非局所性」を選択しており、隠れた変数理論では「不完全生」をとっていた。しかし、新しい解釈では、「量子力学は完全であり、かつ局所的である」と言えることを示した。すなわち、従来の一状態ではなく、二状態を考えることにより、非局所性を避けることができるが、量子力学の体系そのものを変更しているわけではないので、何らかの隠れた変数を導入しているわけではない。それゆえ、本解釈により、量子力学は完全であるとみなすことができながら、非局所性も避けることができるのである。本研究成果は、現在、International Studies in Philosophy of Scienceに投稿し、現在、査読中である。 また、本プロジェクトとそれに関連した研究の成果(新しい解釈の提示、それによる観測問題の解決、アインシュタインのジレンマの解決;アインシュタインが量子力学の発展に果たした、特に哲学的な側面における意義など)は、『アインシュタインvs.量子力学(仮題)』という本にまとめ、化学同人から26年秋頃に出版予定である。すでに草稿は完成しており、他の専門家に下読みをしてもらっている段階である。
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