研究課題/領域番号 |
23720019
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
西尾 浩二 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (20510225)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プラトン / イデア論 / エウテュプロン |
研究概要 |
研究の全体構想は,中期プラトンの教育思想にイデア論等さまざまな背景から新たな光を当て、その可能性を探ることであり、この全体構想の中での本研究の具体的な目的は次の三つからなる。(1)プラトンの前期対話篇にみられるソクラテスの「何であるか」の問い(「勇気とは何であるか」など、一般には「定義の探求」と解される問い)から中期イデア論が生成するには、どのような背景や要因あるいは動機があるのかを明らかにすること。(2) (1)の解明過程で前期対話篇のうちでもとくに「敬虔とは何であるか」を主題とする『エウテュプロン』に焦点を当て、探求における定義の優先性やイデア論との関連をはじめとしてさまざまな論点から総合的に研究を行い、解説・注解付き翻訳を作成し公刊すること。(3) (1)(2)を踏まえて中期イデア論の特質や理論的役割を捉えなおすことにより、中期プラトンの教育思想へ新たな光を当てること。 平成23年度は、これらのうちでおもに(2)に力点を置いて研究を進めた。具体的には、(a)関連文献の収集と先行研究の調査を行い、(b)『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳の作成を進め(現在も継続中である)、その過程で、(c)学会(関西哲学会、日本西洋古典学会)や研究会(古代哲学フォーラム)に参加し最新の知見を摂取するとともに、(d)研究拠点である大谷大学総合研究所に所属の哲学研究者と意見交換を行った。 (2)は(1)および(3)のために必要な作業であり、本研究全体の基礎となる。したがって、本年度の研究の成果は、前期対話篇におけるソクラテスの定義の探求から中期対話篇におけるプラトンのイデア論がいかに生成してくるのかを考察するための基盤を構築する点で意義があり、さらにまた中期プラトンの教育思想の可能性を探る上でも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目的は次の三つであった。(1)プラトンの前期対話篇にみられるソクラテスの「何であるか」の問い(「勇気とは何であるか」など、一般には「定義の探求」と解される問い)から中期イデア論が生成するには、どのような背景や要因あるいは動機があるのかを明らかにすること。(2) (1)の解明過程で前期対話篇のうちでもとくに「敬虔とは何であるか」を主題とする『エウテュプロン』に焦点を当て、探求における定義の優先性やイデア論との関連をはじめとしてさまざまな論点から総合的に研究を行い、解説・注解付き翻訳を作成し公刊すること。(3) (1)(2)を踏まえて中期イデア論の特質や理論的役割を捉えなおすことにより、中期プラトンの教育思想へ新たな光を当てること。 これらのうちで現在までに達成されたのは(2)の途中までであるが、これはおおむね当初の計画どおりの進展状況である。(2)は(1)の解明過程で行われる作業であって(1)の大きな部分を占めているので、(1)と(2)を踏まえた(3)の達成に向けても順調に進展していると評価してよい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度の研究成果に基づき、所期の研究目的(これについては「研究実績の概要」の欄を参照)の(2)を達成することをめざし、さらにそれと平行して(1)と(3)の解明を進め、全体の研究成果を論文として学術雑誌で公表する。そのために文献研究に加え、学会や研究会にも参加し最新の研究を摂取することに努める。 また本年度に引き続き、プラトンの著作『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳の作成を進め、その成果を京都大学学術出版会より公刊する(『ソクラテスの弁明・クリトン・エウテュプロン』として共訳での出版予定)。翻訳作成の際には、研究拠点としている大谷大学においてほかの哲学研究者と意見交換も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は当初参加を予定していた学会が近隣で開催となったため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。したがって、これを次年度の研究費と合わせて使用する。 次年度の研究費は、おもに書籍や消耗品の購入のための物品費と、学会・研究会への旅費として使用する予定である。 ただし、次年度の研究費をすべて次年度に使用するのではなく、その一部をさらに翌年度分の研究費として繰り越す予定である。その理由は、研究期間の延長である。本研究は当初、平成23年度から24年度までの二年間で研究計画を立てていたが、本研究の成果のひとつとなるプラトン『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳(京都大学学術出版会から公刊予定)の公刊時期が、出版社との調整により平成25年度末になったため、当初の研究計画を変更して研究期間を一年間延長する必要が生じた。できるだけ最新の研究を成果として盛り込むために必要な措置である。
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