研究課題/領域番号 |
23720019
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
西尾 浩二 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (20510225)
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キーワード | プラトン / ソクラテス / エウテュプロン / イデア論 |
研究概要 |
研究の全体構想は,中期プラトンの教育思想にイデア論等さまざまな背景から新たな光を当て、その可能性を探ることであり、この全体構想の中での本研究の具体的な目的は次の三つからなる。 (1)プラトンの前期対話篇にみられるソクラテスの「何であるか」の問(「勇気とは何であるか」など一般に「定義の探求」と解される問)から中期イデア論が生成するには、どのような背景があるのかを明らかにすること。 (2) (1)の解明過程で前期対話篇のうちでも特に「敬虔とは何であるか」を主題とする『エウテュプロン』に焦点を当て、探求における定義の優先性やイデア論との関連をはじめさまざまな論点から総合的に研究し、解説・注解付き翻訳を作成し公刊すること。 (3) (1)(2)を踏まえ中期イデア論の特質や理論的役割を捉えなおすことにより、中期プラトンの教育思想へ新たな光を当てること。 これらのうち、平成24年度は、前年度に引き続き(2)に力点を置いた研究を行うとともに、(1)についても研究を進めた。具体的には、(a)ソクラテス哲学における定義の優先性の問題について、主要な先行研究を網羅的に調査し、(b)プラトンの『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳の作成を進めた(継続中)。この(1)と(2)は、本研究全体の中核的部分をなすものであり、ソクラテス哲学および前期から中期のプラトン哲学の解明にとって有意義である。 特に焦点を当てた「定義の優先性」の問題――「美とは何であるか」(美の本質・定義)をまず知らなければ「何が美しいか」(美の事例)も「美は有益か」(美の特性)も知りえないといった立場が、ソクラテスのものか、また哲学的に正しいかという問題――については、考察の結果、イデア論と切り離して論じられてきた従来の研究は不十分であることがわかったため、現在、中期イデア論の生成を視野に入れた形での問題解明を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目的は次の三つであった。 (1)プラトンの前期対話篇にみられるソクラテスの「何であるか」の問(「勇気とは何であるか」など一般に「定義の探求」と解される問)から中期イデア論が生成するには、どのような背景があるのかを明らかにすること。 (2) (1)の解明過程で前期対話篇のうちでも特に「敬虔とは何であるか」を主題とする『エウテュプロン』に焦点を当て、探求における定義の優先性やイデア論との関連をはじめさまざまな論点から総合的に研究を行い、解説・注解付き翻訳を作成し公刊すること。 (3) (1)(2)を踏まえ中期イデア論の特質や理論的役割を捉えなおすことにより、中期プラトンの教育思想へ新たな光を当てること。 これらのうちで現在までに達成されたのは(1)と(2)の途中までであるが、これはおおむね当初の計画どおりの進展状況である。(2)は(1)の解明過程で行われる作業で、(1)の大きな部分を占めている。(1)と(2)を踏まえれば(3)についても何らかの示唆が得られると予想されるので、全体として順調に進展していると評価してよい。 なお、本研究は、当初は二年間の計画であったところ、さらに一年間の補助期間延長を願い出て承認されたものであるが、これは当初計画された翻訳出版の時期が諸般の事情により延期されたため、その間の最新の知見を盛り込み研究の精密化を図ろうとしたものであり、研究そのものの遅れとは考えていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、以下の三つを軸として進める。 (1)ソクラテスの探究方法とプラトンの中期イデア論に関する、先行研究に基づく論文執筆(大谷大学の紀要に投稿予定)。 (2)プラトン『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳の作成(京都大学学術出版会から公刊予定)。 (3)最新の知見を得るための学会や研究会への参加(日本西洋古典学会:東京大学、6月1日~2日。関西哲学会:名古屋大学、10月26日~27日、など)。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況は、補助期間の延長によるものである。すなわち、本研究は当初、平成23年度から24年度までの二年間で研究計画を立てていたが、本研究の成果のひとつとなるプラトン『エウテュプロン』の解説・注解付き翻訳(京都大学学術出版会から公刊予定)の公刊時期が、出版社との調整等により平成25年度末(以降)になったので、できるだけ最新の知見を盛り込むことを意図して、当初の研究計画を変更し、補助期間の一年間の延長を願い出てこれを承認されたのである。 次年度の研究費は、おもに書籍や消耗品の購入のための物品費と、学会・研究会への旅費として使用される予定である。
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