研究課題
今年度はまず昨年度の研究成果発表を行った。昨年度の研究実施状況報告書に記載した通り,平成25年5月に九州中国学会大会で報告を行い,その内容を改訂のうえ『九州中国学会報』に投稿し,近刊予定である。改訂に際しては,関西大学図書館内藤文庫において補充調査を行った。また,平成24年度に初稿を執筆した,顧頡剛の伝記が『講座 東アジアの知識人』(有志舎)に収録され,平成25年12月に刊行された。加えて,5月に中国社会科学院歴史研究所で行われた「顧頡剛先生誕辰120周年紀念会」に出席し,自らのこれまでの研究と今後の研究計画について紹介した。今年度新たに開始した研究としては,交付申請書の研究実施計画に基づき,顧頡剛の疑古学説と,近代以前の中国の考証学説との関係を明らかにすることに取り組んだ。具体的には,顧や所謂疑古派が「発掘」ししばしば言及した崔述(東壁,1740-1816)の学説との関係である。顧と内藤湖南の学説の共通のルーツが崔述であったという見解も既に示されており,顧や内藤湖南と崔述の学説上の関係について具体的に比較検討した。この研究内容については,今年度中に学会等で発表し,発表後論文として刊行したいと考えている。今年度の研究の意義・重要性としては,(1)内藤文庫調査によって,内藤湖南の中国上古史講義の形成過程について再検討し,湖南が富永仲基の加上説を中国上古史研究に応用した年代を従来以上に明確にできたこと,(2)顧頡剛の疑古学説と中国の近代以前の学説の関係について,単に研究方法上の比較・異同の指摘ではなく,具体的な史料観や史料の扱い方,その論理的帰結にまで深めて研究を行ったこと,が挙げられる。これらは従来の研究に対する発展的成果と言うことができる。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的に沿って,本年度に計画した研究を実行し,次年度以後の研究につなげる見通しを得ている。
平成25年度の研究成果の発表を進める。また,同年度の研究で明らかになった事項を踏まえながら,研究開始時の交付申請書における研究実施計画に基づき研究を推進する。
研究計画書に沿った研究活動を行ったところ,前年度までの繰越額及び今年度の申請額の合計の0.9%に相当する残額が生じたものである。次年度使用額の金額はわずかであることから,研究計画を特に変更せず使用する。
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九州中国学会報
巻: 51 ページ: 106-120